ザ・ハーシー・カンパニー

ザ・ハーシー・カンパニーは、通称「ハーシーズ」として広く親しまれる、アメリカ合衆国を代表する菓子製造企業です。特にチョコレート製品においては国内最大手として知られています。同社はアメリカで最も歴史ある菓子会社の一つでもあり、その製品は長年にわたりアメリカ文化の象徴として愛されてきました。本社は、ココアの香りが漂うことでも知られるペンシルベニア州ハーシーに位置しており、そこにはチョコレートをテーマにした巨大なアミューズメント施設「ハーシーズ・チョコレートワールド」も併設されています。

沿革

会社の起源は1894年に遡ります。創業者ミルトン・スネーベリー・ハーシーは、菓子職人としての初期の挑戦（フィラデルフィアでの開業と倒産、ニューヨークでの再起）を経て、ペンシルベニア州ランカスターでランカスター・キャラメル社を設立しました。ここで彼は、新鮮なミルクをふんだんに使ったキャラメル製造で目覚ましい成功を収め、1900年には多額の売上を達成します。この成功を背景に、ミルトン・ハーシーはチョコレート製造へと新たな一歩を踏み出しました。

1903年、彼はペンシルベニア州内に当時としては非常に大規模なチョコレート工場を建設し始めました。この工場から生まれたミルクチョコレートバーはすぐに大きな成功を収め、会社は急速に成長を遂げます。1907年には、底が平らな円錐形の小さなチョコレートを発表し、「ハーシーキス」と名付けました。当初は手作業で包装されていましたが、1921年に機械包装が導入され、製品の上部にハーシー製品であることを示す小さな紙リボンが加えられるようになります。ハーシーキスは1924年に商標登録され、現在に至るまで同社で最も有名で成功した製品の一つとなっています。他にも、1920年代から30年代にかけてミスター・グッドバー（1925年）、ハーシーズ・シロップ（1926年）、チョコレートチップス（1928年）、クラッケルバー（1938年）といった代表的な製品が次々と誕生しました。

1940年には、労働組合の組織化も進みました。アメリカ労働総同盟の地方支部が、ジョン・シーラーのリーダーシップのもと、ハーシー社の労働者を組織することに成功します。現在、この組合員たちは「チョコレート労働者」とも称され、パン製造や菓子製造など、他の関連産業の労働者も代表しています。

事業拡大に伴い、ペンシルベニア州以外にも製造拠点が設立されました。1963年にはカナダのオンタリオ州に、1965年にはカリフォルニア州に大規模工場が開設されました。特にカリフォルニア州の工場は、一時世界最大級のチョコレート工場として知られました。これらの主要工場は現在も稼働しており、カナダの工場では見学ツアーも実施されています。

事業内容と製品

ハーシー社は、効率的な最新システムを備えた大規模流通センターを全米に複数箇所設置し、広範な流通網を通じて製品を供給しています。これにより、アメリカ国内のどこでもハーシー製品を入手することが可能です。

チョコレート製品の特徴として、多くの製品は大量生産に適した製法を採用しており、伝統的なヨーロッパのチョコレートに比べ、ココア分が少なく糖類が多く配合されているため、甘みが強い傾向があります。ヨーロッパ市場でも販売されていますが、そのシェアは限定的です。

また、ハーシー社は自社の菓子製造だけでなく、エンターテイメント事業にも関わっています。ハーシーパークをはじめとするアミューズメント施設、アイスホッケーチームのハーシーベアーズ、ハーシーパーク・スタジアム、ジャイアント・センターといった施設の経営は、関連会社のハーシー・エンターテイメント・アンド・リゾート社との提携のもとで行われています。

企業戦略として、他の菓子メーカーの買収や提携も積極的に行っています。1988年にはキャドバリー・シュウェップス社のアメリカ国内でのライセンス製造・配給権を獲得し、同社製品の展開に関与しました。2005年にはカリフォルニア州のチョコレートメーカー、シャーフェンベーガー・チョコレートメーカー社を買収しています。

さらに、ハーシー社は一般消費者向け製品に加え、アメリカ軍に供給されるレーション用チョコレートの製造も担当しており、これも同社の事業の一側面です。

日本での展開

日本市場においては、1989年に現地法人であるハーシージャパンが設立される以前は、不二家や雪印といった国内企業と提携し、ライセンス生産や販売が行われていました。現在ではロッテが提携の中心となり、輸入品の販売はハーシージャパンが手掛けています。

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