ザ・フィリピノ・チャンネル

ザ・フィリピノ・チャンネル（TFC）

ザ・フィリピノ・チャンネル（The Filipino Channel、TFCと略されます）は、フィリピン共和国を代表するメディア複合企業であるABS-CBNコーポレーションが運営する国際的な衛星テレビ放送サービスです。このチャンネルの主要な目的は、フィリピン国外に居住する数多くのフィリピン人、すなわち在外フィリピン人に対して、母国のテレビ番組を提供することにあります。ABS-CBNがフィリピン国内で制作・放送している多様なコンテンツが、TFCを通じて世界各地に届けられています。

TFCで配信される番組は、ニュース、連続ドラマ、バラエティショー、情報番組、映画など、ABS-CBNの幅広いジャンルをカバーしています。具体的な人気番組の例としては、活気あるバラエティ番組である『ワウワウウィー』や、世界中でフォーマットが展開されているゲームショーのフィリピン版『ディール・オア・ノー・ディール』、さらにはフィリピンの芸能ニュースを扱う『The Buzz』などが挙げられます。これらの番組を通じて、在外フィリピン人は母国の文化や社会情勢、エンターテイメントの最新動向に触れ、故郷との繋がりを感じることができます。

日本における放送の歴史

日本においても、TFCはかつて衛星多チャンネル放送プラットフォームであるスカパー！を通じて視聴が可能でした。しかし、その日本での放送の歩みは直線的ではなく、何度かの停止と再開を経験しています。

最初に日本でABS-CBNの番組が視聴できたのは、2007年10月までの期間でした。この時、スカパー！のチャンネル番号787では、「ウィンズ・フィリピノ・チャンネル」という名称で、ABS-CBNのコンテンツが配信されていました。しかし、2007年11月になると、チャンネルの配信元がフィリピンの別の主要メディアネットワークであるGMAネットワークのチャンネル（GMA Pinoy TV）に切り替わったため、ABS-CBNの番組は日本国内では一時的に視聴できなくなりました。

その後、TFCとして再び日本でABS-CBNの番組を配信する計画が持ち上がり、2008年12月からの放送再開を目指すこととなりました。再開に先立ち、2008年11月からは、同じスカパー！の787chにて、TFCの放送開始を予告する無料の告知放送が開始されました。しかし、皮肉なことに、予定されていた2008年12月1日になっても本放送は開始されず、告知放送がそのまま放送され続けるという状況が続きました。この状態が解消されることなく、最終的に2009年1月31日をもってチャンネルは停波し、日本におけるTFCの放送は一旦終了という形になりました。

一旦放送を終えてから約8ヶ月後の2009年10月1日、TFCは再び日本での放送を再開しました。この時もスカパー！の787chを使用し、衛星役務利用放送事業者としてスカパー・ブロードキャスティングがサービスを提供しました。この再開により、日本のフィリピン系住民やフィリピンに関心のある視聴者は、再びTFCを通じて母国の番組を楽しむことができるようになりました。

しかし、この再開された放送も永続的なものとはならず、2012年9月30日をもって、TFCの日本におけるスカパー！での放送サービスは最終的に終了しました。

TFCは、世界中に散らばるフィリピン人コミュニティにとって、母国の最新情報を得たり、文化的なルーツとの繋がりを保ったりするための重要なメディアインフラの一つとして機能しています。日本での放送はその歴史の中で様々な局面を迎えましたが、多くの在日フィリピン人にとって、母国を身近に感じさせてくれる存在であったことは間違いありません。

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