衛星役務利用放送

衛星役務利用放送とは（廃止）

衛星役務利用放送は、かつて電気通信役務利用放送法施行規則に規定されていた、電気通信役務利用放送の一種です。2011年6月30日に電気通信役務利用放送法が放送法に統合された際、衛星役務利用放送も廃止されました。本稿では、廃止されるまでの衛星役務利用放送について解説します。

概要

衛星役務利用放送は、特定の条件を満たす無線通信の送信を指します。具体的には、12.2GHzを超え12.75GHz以下の周波数帯を使用し、人工衛星から直接受信されることを目的とした無線通信です。ただし、東経109度から111度の範囲に位置する人工衛星からの送信で、電波の偏波が左旋円偏波であるものに限られていました。また、電気通信事業者が提供する電気通信役務を利用して行われる必要がありました。

従来の日本の衛星放送は、放送法に基づく認定を受けた委託放送事業者が、電波法に基づく免許を持つ受託放送事業者に放送を委託する形で行われていました。しかし、12.2 - 12.75GHzの周波数帯を用いるCS放送（東経110度右旋円偏波を除く）に限り、参入条件を大幅に緩和した制度として、衛星役務利用放送が導入されました。

番組編成を行う事業者が無線局免許を持たない点や、マスメディア集中排除原則の適用を受ける点は委託放送事業者と同様です。しかし、外資規制が撤廃され、「認定」から「登録」へと手続きが簡素化された点が大きな違いでした。

この制度により、CS放送への新規参入が増加しました。既存の委託放送事業者も衛星役務利用放送へ移行する事例が見られました。外資規制撤廃により、海外の大手メディアグループや公共放送局が、日本法人を設立して参入するケースもありました。逆に、海外からの資本参加を促す目的で、衛星役務利用放送へ移行した国内事業者も存在しました。

地上波放送事業者を兼ねるCS放送事業者では、最後まで委託放送を行っていた関西テレビ放送が、2008年に衛星役務利用放送事業者へ移行しました。これにより、地上波放送兼営事業者のCS放送はすべて衛星役務利用放送となりました。

電気通信役務を提供する電気通信事業者としては、JSAT、宇宙通信、インテルサットの3社がありました。しかし、インテルサットは、同社の衛星回線を利用する委託放送事業者が2006年に放送を休止したため、有名無実の状態となりました。JSATと宇宙通信は、2008年にスカイパーフェクト・コミュニケーションズと合併し、スカパーJSATとなりました。以降は、スカパーJSATのみがこの事業を行っていました。

制度廃止時には、合計46の事業者が存在していました（うち1事業者は有線役務利用放送も兼営）。

経過措置

電気通信役務利用放送法の放送法への統合に伴い、衛星役務利用放送は衛星一般放送に、事業者は衛星一般放送事業者にみなされました。

関連事項

日本の衛星放送
委託放送事業者
有料放送管理事業者
有線役務利用放送

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