ザ・モンスター (2016年の映画)

ザ・モンスター (The Monster)

2016年にアメリカ合衆国で製作・公開されたホラー映画。ブライアン・ベルティノが監督を務め、ゾーイ・カザンが主演を務めた。

概要

南部サウスカロライナ州の寂しい夜道で、車が立ち往生した母娘が未知の巨大な生物に襲われる様を描く。閉鎖的な空間におけるモンスターからの脅威と、問題を抱えた母娘の関係性の変化を軸に物語が展開する。批評家からは概ね好意的な評価を得ており、特に主演ゾーイ・カザンの演技や、伝統的なモンスターパニックに人間ドラマを織り交ぜた構成が高く評価された。

ストーリー

アルコール依存症を抱え、娘リジーとの関係が冷え切っているキャシー。彼女は10歳になる娘を元夫のもとへ送り届けるため、夜のサウスカロライナ州のハイウェイを車で走らせていた。二人の会話は途切れがちで、車内には険悪な空気が流れている。その道中、彼らの車は思いがけずオオカミを轢いてしまう。オオカミの死骸を確認したキャシーは、その体に奇妙な、まるで鋭い爪で引き裂かれたかのような深い傷跡が残されていることに気づき、不審に思う。車も損傷し走行不能となったため、キャシーが負傷したこともあり、リジーは携帯電話でレッカー車と救急車の手配を試みる。

しばらくしてレッカー車が到着し、運転手のジェシーが作業を開始する。車内で待つリジーが何気なく外に目をやると、先ほど轢いたはずのオオカミの死体が忽然と消え失せていることに気づく。その異変に不安を感じたリジーはキャシーに訴えるが、キャシーはまともに取り合わない。口論の末、キャシーはリジーを車に残し、ジェシーの様子を見に車外へ出る。しかし、ジェシーの姿はどこにも見当たらない。キャシーが周囲を警戒していると、車のルーフに何かが落下する鈍い音が響く。それは、無残にも切断されたジェシーの腕だった。その直後、苦悶の表情を浮かべたジェシーが森の中から這いずり出てくるのが見える。驚愕したキャシーは彼を助けようとするが、叶わない。ジェシーは見る間に何者かに捕らえられ、森の闇へと引きずり込まれ、凄まじい物音と共に命を絶たれてしまう。

恐怖に慄く母娘のもとへ、ようやく救急車が到着する。しかし、救急隊員たちもまた、為す術もなく姿の見えない怪物に次々と殺されてしまう。怪物から逃れるため、二人は残された救急車に乗り込み、必死にその場からの脱出を図る。だが、救急車もまた怪物の猛攻を受け、制御を失い大きな木に激突し、動かなくなってしまう。完全に閉じ込められ、怪物の脅威が間近に迫る絶望的な状況の中、重傷を負ったキャシーは自らの命がもはや長くないことを悟る。そして、愛する娘リジーを怪物から逃がすため、自らを犠牲にすることを決意する。

別れ際、キャシーはリジーに心からの愛を込めて「貴方は私の宝物よ」と語りかける。その言葉を聞いたリジーは、荒れた生活を送るようになる前の、優しく愛情深かった母の記憶を鮮やかに思い出す。母の覚悟と愛情を受け止めたリジーの中に、眠っていた勇気が呼び覚まされる。彼女は意を決し、単身怪物と対峙することを決める。様々な困難を乗り越え、リジーはついにその怪物を焼き殺し、生き延びる。

キャスト

主なキャストは以下の通り。

キャシー：ゾーイ・カザン
リジー：エラ・バレンタイン
ジェシー：アーロン・ダグラス
ロイ：スコット・スピードマン
レスリー：クリスティン・エバディ
モンスター：クリス・ウェブ

製作

本作の企画は2014年5月に報じられ、当初はエリザベス・モス主演、タイトルも『There Are Monsters』とされていた。しかし、2015年5月にモスが降板し、ゾーイ・カザンが代役として主演に起用されることが発表された。その後、同年8月にはスコット・スピードマン、エラ・バレンタイン、アーロン・ダグラスら主要キャストが決定。撮影を経て、公開を控えた2016年8月、タイトルが最終的に『The Monster』へと変更された。

公開と評価

全米配給権は2015年5月にA24が獲得。プロモーションとしては、2016年4月に初の劇中写真が公開され、同年10月にはオフィシャル・トレイラーが解禁された。

批評家からの評価は全体的に好意的だった。映画批評集積サイトRotten Tomatoesには45件のレビューが集まり、80%の批評家が支持、平均点は10点満点中6.9点という評価を得た。サイトの総評では、「『ザ・モンスター』はシンプルな設定とゾーイ・カザンの見事な演技を駆使し、伝統的な要素とそれを覆す要素を併せ持った、非常に魅力的なホラーストーリーを提示している」と述べられている。また、別の批評集積サイトMetacriticでは、13件のレビューに基づく加重平均値が100点満点中69点となっている。

参考文献

IMDb（英語）

Rotten Tomatoes（英語）

* Metacritic（英語）

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