ザ・ロスト・ペパーランド・アルバム

『ザ・ロスト・ペパーランド・アルバム』は、ポール・マッカートニーが1987年にリリース予定だった未発表のアルバムで、音楽界での注目を集める作品でした。本作はフィル・ラモーンがプロデューサーとして関わっており、ポールとラモーンの音楽的な出会いは1986年の「ラヴリエスト・シング」に始まりました。両者の個性がぶつかり合う中で、アルバムの制作セッションが進められました。このアルバムの名称は一般的に「ザ・ロスト・ペパーランド・アルバム」と呼ばれていますが、正式には「Return to Pepperland」としても知られています。

制作の背景

このアルバムは、ザ・ビートルズの名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のリリースから20年目という背景を受けて制作されました。収録予定曲には、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のリメイク版や「リターン・トゥ・ペパーランド」、さらには「P.S.ラヴ・ミー・ドゥ」や「アトランティック・オーシャン」など、ビートルズへのオマージュに溢れた曲が含まれていました。ポールはラモーンとの仕事を重視し、次のセッションにも彼を招き入れます。このセッションはホッグ・ヒル・スタジオで行われ、多くの楽曲が制作されました。

未発表の理由

アルバムは、曲順を決定する段階まで進んでいたにも関わらず、最終的には本作品が発表されることはありませんでした。その理由として、ポールとラモーンの音楽に対するビジョンの食い違いが大きな要因とされています。トニー・クラーク著の『Paul McCartney Recording Sessions』によれば、彼らの意見が対立し、ラモーンはスタジオを去ることになったとされています。エンジニアのスティーヴ・レオンは、ポールとラモーンの間には居心地の悪さが漂っていたと語り、ラモーンが求めていたサウンドとは異なる方向性を目指していたため、セッションはつまずいてしまったと述べています。

収録予定曲

本アルバムの制作にあたっては、未発表曲が15曲も用意されました。以下に、収録予定曲の一部とその後の経歴を記します。

- ワンス・アポン・ア・ロング・アゴー（1987年シングル）

- オール・ザ・ベストの英国版に収録。

- バック・オン・マイ・フィート（エルヴィス・コステロとの共作）
- ラヴリエスト・シング（1989年アルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート』収録）

- 原曲とは異なった構成でのリリース。最終的には再発盤にも収録。

- P.S.ラヴ・ミー・ドゥ（日本公演で披露後、アルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート』に収録）
- アトランティック・オーシャン（1997年ラジオ内で発表、新たなミックスとしてリリース）
- クリスチャン・バップ（1991年『リヴァプール・オラトリオ』に収録）
- ビューティフル・ナイト（1997年シングル）
- サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドのリメイクバージョン
- リターン・トゥ・ペパーランド

このように、未発表の楽曲は様々な形で世に出ることとなりましたが、アルバム自体は未だ組されていません。なお、セッション中に制作された音源の一部は、海賊版として流通しているとも報じられています。ポールの未発表曲がどのように活かされるのか、今後の動向に注目です。

もう一度検索