フィル・ラモーン

フィル・ラモーン：音楽史を彩った革新的なプロデューサー

フィル・ラモーン（Phil Ramone, 1934年1月5日 - 2013年3月30日）は、アメリカ合衆国出身の音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニアであり、ヴァイオリニスト、作曲家としても知られています。彼の音楽に対する深い愛情と革新的な技術は、数多くのアーティストの作品を輝かせ、音楽史に多大な影響を与えました。

生い立ちと音楽への目覚め

ラモーンは南アフリカ共和国で生まれ、ニューヨークのブルックリンで育ちました。3歳からヴァイオリンを始め、10歳の時にはエリザベス2世の前で演奏するという早熟の才能を発揮しました。1940年代後半には、クラシック音楽のヴァイオリニストを目指してジュリアード音楽院に進学し、そこでジャズ・サクソフォーン奏者のフィル・ウッズと出会いました。

レコーディング・エンジニア、プロデューサーとしての躍進

1959年、ラモーンはレコーディング・スタジオ「A&Rレコーディング」を設立しました。彼は革新的な技術を積極的に導入し、レコーディング・エンジニア、音楽プロデューサーとして高い評価を得るようになります。ポール・サイモン、アート・ガーファンクル、ボブ・ディラン、フランク・シナトラ、バリー・マニロウ、アレサ・フランクリン、ビリー・ジョエルなど、数々の著名なアーティストの作品制作に携わりました。

特に有名なエピソードとして、マリリン・モンローがジョン・F・ケネディのために歌った「ハッピーバースデートゥーユー」の録音にクレジットされていることが挙げられます。

音楽技術への貢献

ラモーンは音楽技術の発展にも大きく貢献しました。4トラック・レコーダー、映画の光学式サラウンド音声、デジタル録音技術などを導入し、A&Rスタジオでは初の一般販売用コンパクトディスクが製作されました。大々的に販路に乗った最初のCDアルバムは、1978年発売のビリー・ジョエルのアルバム『ニューヨーク52番街』です。また、初の商業的なDVDは、1997年にデイヴ・グルーシンが手掛けた『ウエストサイド物語』であり、これもラモーンの手によるものでした。

教育への貢献と晩年

ラモーンは、ニューヨーク州のファイヴ・タウンズ・カレッジとバークリー音楽大学から名誉学位を授与されており、バークリーでは理事も務めました。2007年10月9日には、チャック・グラナータとの共著による書籍『Making Records: The Scenes Behind The Music』が出版されています。

2013年3月30日、ラモーンはニューヨークで亡くなりました。大動脈瘤のため入院中だったと報じられています。

受賞歴

ラモーンは、グラミー賞に33回ノミネートされ、14回受賞しています。

1965年 - 最優秀録音賞（クラシック以外） - 『ゲッツ/ジルベルト|ゲッツ_ジルベルト』
1970年 - 最優秀ミュージカル・アルバム（プロデューサー） - 『プロミセス、プロミセス』
1976年 - 最優秀アルバム（プロデューサー） - ポール・サイモン『時の流れに』
1979年 - 最優秀レコード（プロデューサー） - ビリー・ジョエル「素顔のままで」
1980年 - 最優秀アルバム（プロデューサー） - ビリー・ジョエル『ニューヨーク52番街』
1981年 - 最優秀プロデューサー（クラシック以外）
1984年 - 最優秀サウンドトラック・アルバム - 『フラッシュダンス』
1995年 - 最優秀ミュージカル・ショー・アルバム（プロデューサー） - 『Passion』
2002年 - 最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム（プロデューサー） - トニー・ベネット『ウィズ・マイ・フレンズ』
2004年 - 音楽の録音技術への貢献
2004年 - 最優秀サラウンドアルバム - レイ・チャールズ『ジーニアス・ラヴ～永遠の愛』
2004年 - 最優秀アルバム（プロデューサー） - レイ・チャールズ『ジーニアス・ラヴ～永遠の愛』
2005年 - 最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム（プロデューサー） - トニー・ベネット『アート・オブ・ロマンス』
2006年 - 最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム（プロデューサー） - トニー・ベネット『デュエッツ：アメリカン・クラシック』

また、1973年にはエミー賞をCBSのデューク・エリントンの番組でサウンド・ミキサーとして受賞しています。

フィル・ラモーンは、その卓越した才能と革新的な精神で、音楽史に多大な足跡を残しました。彼の作品は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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