ザ・ローリング・ストーンズ (アルバム)

ザ・ローリング・ストーンズ：デビューアルバムの軌跡

1964年4月、ザ・ローリング・ストーンズの記念すべきデビューアルバム『ザ・ローリング・ストーンズ』がリリースされました。イギリスではチャート1位を獲得、アメリカでも11位と高い人気を博しました。しかし、このアルバムは単なるデビュー作という枠を超え、音楽史に刻まれた重要な作品と言えるでしょう。

録音からジャケットデザインまで

アルバムのレコーディングは、ロンドンのリージェント・サウンド・スタジオで断続的に行われました。この時期のストーンズはまだオリジナル楽曲の制作に力を注いでおらず、収録曲の多くはチャック・ベリーやボ・ディドリーといったブルース・ミュージシャンのカバーです。3曲のみがオリジナル曲という構成になっています。

ジャケット写真には、メンバー5人のカラー写真が使用されました。しかし、これがまた異例のデザインでした。ジャケットの表側には、アーティスト名やアルバムタイトルが一切記載されておらず、右上に「Decca」のロゴのみが小さく記されています。裏表紙には、マネージャーのアンドリュー・ルーグ・オールダムが綴ったライナーノーツが掲載され、「ローリング・ストーンズはただのグループではなく、一つの生き方である」という力強い言葉が記されています。

アメリカ盤は『イングランズ・ニューエスト・ヒットメーカーズ』というタイトルで、イギリス盤より1ヵ月半遅れてリリースされました。収録曲も異なり、イギリス盤に収録されていた「Mona (I Need You Baby)」は削除され、アメリカでのデビューシングル「Not Fade Away」が追加されています。ジャケットデザインはイギリス盤とほぼ同じですが、表ジャケットにはアーティスト名とアルバムタイトルが大きく表示されています。アメリカ盤ではモノラルとステレオの両バージョンが制作されました。日本でも同年12月に発売され、邦題は『これがリヴァプール・サウンドの決定盤!! ザ・ローリング・ストーンズ』と付けられました。

賛否両論の評価とその後

イギリスでは、ビートルズの『ウィズ・ザ・ビートルズ』に取って代わる形で12週間連続でチャート1位を記録するなど、大きな成功を収めました。アメリカでも8月22日付のチャートで最高11位を記録し、高い人気を誇りました。

批評家の反応は様々で、『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』などからは絶賛された一方、『メロディー・メイカー』などからは辛辣な批評も寄せられました。ビル・ワイマンは自身の自伝の中で、このアルバムが彼らにとって大きな転換点となったことを記しています。

その後、CD化やリマスタリングを経て、何度も再発されています。1986年の初CD化ではアメリカ盤が採用されたため、イギリス盤は廃盤となりました。しかし、2002年にはアメリカ盤がSACDとのハイブリッドCDとして再発され、2011年にはハイレゾリューション・デジタル配信でもリリースされています。2016年には、デッカ時代のオリジナルアルバムのモノラル版を復刻したボックスセットにも収録されました。

収録曲

イギリス盤とアメリカ盤では収録曲が異なっているため、それぞれに記載します。両バージョン共に、ブルース、R&Bの名曲が多数収録され、ストーンズ独自の解釈が加えられています。オリジナル曲も3曲収録されており、彼らの才能の一端を見ることができます。彼らの音楽的ルーツと、独自のスタイルの確立への道筋を示す重要な作品と言えるでしょう。

イギリス盤
Route 66
I Just Want to Make Love to You
Honest I Do
Mona (I Need You Baby)
Now I've Got a Witness
Little by Little
I'm a King Bee
Carol
Tell Me
Can I Get a Witness
You Can Make It If You Try
Walking the Dog

アメリカ盤
Not Fade Away
Route 66
I Just Want to Make Love to You
Honest I Do
Now I've Got a Witness
Little by Little
I'm a King Bee
Carol
Tell Me
Can I Get a Witness
You Can Make It If You Try
Walking the Dog

参加ミュージシャン

ザ・ローリング・ストーンズのメンバーに加え、イアン・スチュワート、フィル・スペクター、ジーン・ピットニーといったゲストミュージシャンも参加しています。それぞれの演奏が、このアルバムに深みを与えていると言えるでしょう。

このデビューアルバムは、ザ・ローリング・ストーンズの音楽的基盤を築き、後の輝かしいキャリアへと繋がる重要な作品です。彼らの音楽を理解するためには、ぜひ一度聴いてみることをお勧めします。

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