ザ・松田 ブラックエンジェルズ

『ザ・松田 ブラックエンジェルズ』は、平松伸二氏による人気漫画『ブラック・エンジェルズ』から生まれたスピンオフ作品です。前作で壮絶な最期を遂げたと思われた松田鏡二が主人公となり、新たな活躍を描いています。

本作は、単なるスピンオフにとどまらず、『マーダーライセンス牙』とのクロスオーバー作品『マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』での設定を踏襲。前作との繋がりを随所に感じさせる展開が特徴です。連載に至った経緯は、平松伸二氏の「松田を主人公にした漫画を描きたい」という強い思いと、『別冊漫画ゴラク』編集部の後押しが合致した結果でした。

物語は、松田が様々なアルバイトをしながら、汚職官吏や国際的な犯罪組織といった悪と対峙する様子を描いています。AV男優、クラブのバウンサー、高層ビルの窓拭きなど、松田のアルバイト先は常に事件の渦中にあります。彼は、力技と豪快なアクションで悪を懲らしめ、読者に痛快感を与えます。

松田のキャラクターは、細かいことを気にしない豪快さと、弱者を守る正義感の両面を持ち合わせています。彼の怒りや悲しみを代弁するようなセリフは、多くの読者の共感を呼びました。特に「いんだよ、細けえことは」という口癖は、本作のキャッチコピーにもなっているほどの人気フレーズです。

本作には、当時の社会問題を思わせるエピソードや登場人物も多く登場します。「強満電力の社長」、「人気アイドルグループのスポンサー」、「歌舞伎役者を陥れたアウトロー」など、現実の事件を彷彿とさせる描写が散りばめられています。この大胆な作風も、本作が日本オタク大賞2012年度大賞を受賞した理由の一つと言えるでしょう。

松田の描写は、前作以上に超人的なアクションが強調されています。マシンガンの銃弾を素手で受け止めたり、震災で歪んだ東京タワーを修復したり、蹴りで周囲の放射能濃度を下げたりと、その活躍ぶりは規格外です。首相官邸に突っ込んできたジャンボジェットを止めたというエピソードも、『マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』での活躍を引き継いだものです。

額には『ブラック・エンジェルズ』での銃創が残っており、その傷跡は、彼の壮絶な過去と、本作での復活劇を象徴しています。復活劇や彼の不死身の理由については作中で「世界観が違う」と説明されており、現実離れした強さの源泉が示唆されています。物語終盤では、「いんだよ、細けえことは」という境地に至ったことで、一種の無の境地を悟ったと雪藤によって分析されています。

物語終盤、麗羅、水鵬との戦い後、一度は息絶えるも、人間の能力を超えた生命力で復活。続く『ザ・松田 超人最強伝説』では、その超人的な強さはさらに増し、ミサイルと共に大気圏外へ飛び出し、核ミサイルを蹴り落とすなど、まさに超人と言える活躍を見せます。その圧倒的な力ゆえに「生物兵器」や「危険すぎる野良犬の超人」と評されることもありますが、彼の正義感は揺らぐことはありません。

本作には、前作『ブラック・エンジェルズ』の主人公である雪藤洋士や、『マーダーライセンス牙』の主人公・木葉優児など、他の作品からの登場人物も登場します。彼らとの共演も、本作の魅力の一つです。また、『ザ・松田　超人最強伝説』では、さらにパワーアップした松田の活躍に加え、新たなキャラクターも登場し、物語は新たな展開を迎えます。

『ザ・松田 ブラックエンジェルズ』は、痛快なアクションと社会派なストーリー、そして個性豊かなキャラクターたちが織りなす、唯一無二の作品です。その人気は、単行本3巻、続編『ザ・松田 超人最強伝説』2巻の発売、そして性格診断アプリ『ザ・松田 外道診断』のリリースにも繋がっています。アプリでは、小林樹音氏（TAMTAM）が音楽を担当しており、作品の世界観をさらに広げています。

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