シアル酸

シアル酸についての詳細

シアル酸（英: sialic acid）は、ノイラミン酸（英: neuraminic acid）の変種を示すファミリー名です。これは通常、糖鎖の非還元末端に存在し、生物の細胞認識や他の重要な機能に寄与しています。ノイラミン酸そのものは独特な9炭糖であり、特にカルボキシル基とアミノ基を含む構造を持っています。

特に自然界では、N-アセチルノイラミン酸（Neu5Ac）が最も一般的に見られ、次いでN-グリコリルノイラミン酸（Neu5Gc）が存在します。これらの化合物は、ガングリオシドと呼ばれる糖鎖の構成要素として多くの生物に存在しています。

シアル酸は、糖タンパク質の一種であるセレクチンに多く含まれ、ヒトを含むさまざまな生物の細胞間相互作用を調整する役割を果たします。このシアル酸リッチな糖タンパク質は、特に転移するガン細胞によく見られ、これらの細胞が血流に入る手助けをしています。

さらに、シアル酸を多く含む複合糖質は、細胞表面の水分を維持する機能もあります。シアル酸が存在する細胞の表面では、カルボキシ基が一部解離して負に帯電することがあり、これにより細胞は負の電荷を持つことになります。この負電荷の影響で、正の電荷を持つ水分子が細胞表面に引き付けられるため、細胞環境が保たれます。例えば、赤血球の表面もシアル酸が豊富で、これが携わることで赤血球同士が電気的に反発し、凝集を防ぐ役割を果たしています。

N-グリコリルノイラミン酸は、CMP-Neu5Acのアセトアミド基に酸素原子を1つ追加する酵素であるCMP-Neu5Ac hydroxylase（CMAH）によって合成されます。人間の体内では、このNeu5Gcは遺伝子レベルで存在しないことが明らかになっており、250万年以上前にCMAH遺伝子のエキソンが消失したためと考えられています。これは、ヒトの祖先が病原体に対する感染リスクを軽減するために、家畜化の過程で生じた進化的特性であるといわれています。

また、シアル酸は免疫機能にも密接に関わっています。たとえば、豚などの動物からの臓器移植の際、Neu5Gcを含む糖鎖に対して人体が抗体を生成し、それを攻撃する反応が始まります。これにより、異種間臓器移植における最大の障壁が生じると理解されています。ただし、Neu5Gc自体は特に毒性があるわけではなく、大量に摂取した場合はほとんどが体外に排出されることが確認されています。

関連事項

• - インフルエンザ: ノイラミニダーゼ阻害薬がインフルエンザ治療薬として用いられています。

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