シェパーズパイ

シェパーズパイ（コテージパイ）とは？

シェパーズパイ、またはコテージパイは、イギリスを代表する家庭料理です。牛肉または羊肉をベースにしたミートソースに、マッシュポテトの層を乗せて焼き上げた、素朴で滋味深いパイです。一見シンプルですが、その歴史や地域差によるバリエーションは豊かで、世界中で愛されています。

歴史と語源

コテージパイという名称は、1791年頃に初めて記録に登場します。当時、ジャガイモが庶民にも普及し始めた頃で、「コテージ」という言葉は農家の質素な住居を意味しており、この料理が庶民に親しまれていた様子がうかがえます。初期のレシピ本には、様々な肉の残り物を活用した料理として紹介されており、マッシュポテトは付け合わせとして添えられていたようです。

一方、「シェパーズパイ」という名称は1870年代以降に現れ、それまではコテージパイと区別がありませんでした。現代では、シェパーズパイは羊肉を使用することが一般的です。これは、羊飼いが羊の世話をすることから連想された通俗的な語源とされていますが、確証はありません。日本語では「シェファーズパイ」と表記される場合もあります。

世界のシェパーズパイ

シェパーズパイはイギリス発祥ですが、世界各国で独自のバリエーションが発展しています。

オーストラリア: ミートパイの一種として親しまれており、マッシュポテトの層がパイ生地の役割を果たします。ニュージーランドでは、さらにジャガイモを添えて「ポテトパイ」と呼ばれています。
アメリカ合衆国: 「カウボーイパイ」という類似料理があります。ニューイングランド地方では、挽肉、クリームコーン、マッシュポテトを使ったレシピが一般的です。
カナダ（ケベック州）: 「パテシノワ（Pâté chinois）」と呼ばれ、フランス語圏で親しまれています。
フランス: 「アッシパルマンティエ（Hachis Parmentier）」と呼ばれています。これは、ジャガイモをフランスに紹介したアントワーヌ・オーギュスタン・パルマンティエにちなんだ名称です。
ベジタリアン向け: 肉の代わりに大豆などの代替肉を使用することで、ベジタリアンでも楽しめるアレンジが可能です。
中東: ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナでは、「キッベ・バタタ」という類似料理が存在します。
* ロシア: 「カルトーフェリナヤ・ザペカンカ（Картофельная запеканка）」と呼ばれ、ポテトグラタンのような料理として親しまれています。

このように、シェパーズパイはイギリス発祥の料理でありながらも、それぞれの国の食文化と融合し、多様な姿を見せています。シンプルな材料で作れる一方で、その奥深い歴史と世界各国でのバリエーションは、この料理の魅力をさらに深めています。手軽に作れる家庭料理から、レストランのメニューまで、幅広く愛されるシェパーズパイは、これからも人々を魅了し続けることでしょう。

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