シエラ・スペース

シエラ・スペース

シエラ・スペースは、アメリカ合衆国に拠点を置く革新的な航空宇宙企業です。特に、再利用可能な有翼宇宙船「ドリームチェイサー」の開発や、将来の宇宙商業化を支える民間宇宙ステーションの構築に注力しています。

設立の背景と母体

同社は2021年、長年にわたり宇宙関連事業を展開してきたシエラ・ネヴァダ・コーポレーションから、その宇宙システム部門が独立する形で設立されました。シエラ・ネヴァダ・コーポレーションは、元々航空機の整備事業からスタートし、その後事業領域を拡大。2008年以降は、有翼宇宙船ドリームチェイサーをはじめとする宇宙輸送システムや人工衛星の開発に深く関わるようになりました。その技術と経験、そして人的リソースは、シエラ・スペースの設立基盤となっています。シエラ・ネヴァダ・コーポレーション時代には、複数の元NASA宇宙飛行士が要職に就くなど、宇宙開発の専門知識を持つ人材を擁していました。

主要プロジェクト：ドリームチェイサー

シエラ・スペースの代表的なプロジェクトの一つが、有翼の宇宙船「ドリームチェイサー」です。これはスペースシャトルのような外見を持つ再利用可能な宇宙往還機であり、滑走路に着陸できる点が特徴です。国際宇宙ステーションへの物資輸送サービス提供を目指しており、将来的な有人宇宙飛行への応用も視野に入れています。

主要プロジェクト：民間宇宙ステーション

同社は、地球低軌道の商業化時代を見据え、民間宇宙ステーションの開発にも積極的に取り組んでいます。特に、大手宇宙企業ブルーオリジンと共同で推進する「オービタル・リーフ」構想では中心的な役割を担っています。この構想は、多様な目的（研究、製造、観光など）に利用可能な商業宇宙複合施設を軌道上に構築することを目指しています。

オービタル・リーフ構想において、シエラ・スペースは主に二つの要素を担当します。

1. 輸送サービス: 自社のドリームチェイサー宇宙船を用いて、宇宙ステーションへの物資や将来的な人員の輸送を行います。
2. LIFEモジュール: 宇宙空間で膨張・展開する構造を持つ居住・実験モジュール「LIFE（Large Integrated Flexible Environment）モジュール」を開発・提供します。このモジュールは、従来の金属製モジュールよりも軽量で輸送効率が高く、広い内部空間を提供できる可能性を秘めています。

オービタル・リーフ本稼働に先立ち、シエラ・スペースはまずLIFEモジュールの技術実証機を軌道上に打ち上げ、その性能と信頼性を確認する計画です。2023年時点の計画では、この実証機の打ち上げは最短で2026年末頃が見込まれており、商業宇宙ステーション構築に向けた重要な一歩となります。

日本との連携

シエラ・スペースは、日本の宇宙開発機関である宇宙航空研究開発機構（JAXA）が進めるプロジェクトにおいても重要な役割を担っています。国際宇宙ステーションへの物資輸送を担った日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」（HTV）では、外部に搭載する機器を固定するための機構を国内の協力企業に提供しました。さらに、その後継機となる新型宇宙ステーション補給機（HTV-X）においても、宇宙ステーションとのドッキングを行うための機構や、機内の気圧を計測するセンサーなど、基幹的な部品の開発を担当しており、日本の宇宙輸送技術とも深く連携しています。

シエラ・スペースは、ドリームチェイサーによる輸送能力と革新的なLIFEモジュールを中心とした民間宇宙ステーション構想を通じて、今後の宇宙利用の拡大と商業宇宙時代の到来を牽引する企業として注目されています。

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