ブルーオリジン

ブルーオリジン：宇宙への新たな扉を開く

ブルーオリジンは、Amazon.comの創設者であるジェフ・ベゾスによって設立された航空宇宙企業です。同社は、「Gradatim Ferociter（段階的に、大胆に）」というモットーを掲げ、将来の有人宇宙飛行の実現を目指し、宇宙旅行のコスト削減と信頼性向上に焦点を当てた技術開発を進めています。

ブルーオリジンの歴史

設立当初、ブルーオリジンは準軌道飛行に重点を置いていました。テキサス州の施設で開発された「ニューシェパード」と呼ばれる宇宙船は、当初2010年に商業弾道飛行を開始する予定でしたが、度重なる延期を経て2015年に無人飛行を達成しました。

2009年には、NASAの商業乗員輸送開発（CCDev）計画の候補に選出されたものの、2011年の最終選考には参加せず、独自開発を続けました。ベゾスは2011年のインタビューで、誰もが宇宙に行けるようにすることを目指し、宇宙輸送費の低減と有人宇宙飛行の安全性向上を目標に掲げました。2014年7月までに、ベゾスは自身の資産から5億ドル以上をブルーオリジンに投資しました。

2014年9月には、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）と提携し、ブルーオリジンのBE-4エンジンをULAのアトラスV後継機に搭載することで合意しました。しかし、BE-4エンジンの開発は大幅に遅れ、2024年1月にはヴァルカンロケットに搭載され打ち上げに成功しました。

ブルーオリジンの主要製品

ローンチ・ヴィークル

- Charon: ブルーオリジン初の飛行試験機で、ジェットエンジンを搭載した低高度機です。大気中での誘導・制御技術の試験に使用され、後のロケット開発に役立てられました。2005年3月5日に一度だけ試験飛行を行いました。

- ゴダード: Charonに続く試験機で、2006年11月13日に初飛行に成功しました。しかし、2回目の打ち上げは実施されませんでした。

- ニューシェパード: 弾道飛行用の打ち上げシステムで、乗員カプセルとロケット推進モジュールで構成されています。乗員カプセルは最大6人を収容でき、ロケットから分離後にパラシュートで帰還します。推進モジュールは逆噴射で着陸し、両方とも再利用可能です。2021年7月20日には、ジェフ・ベゾスを含む4名の乗客を乗せた初の宇宙旅行を成功させました。

- ニューグレン: ブルーオリジンが開発中の大型ロケットで、2段式と3段式の構成を持ちます。1段目にはBE-4エンジンを7基搭載し、再利用が計画されています。開発は遅延しており、2023年第4四半期以降に打ち上げ予定です。Amazon.comは2024年以降にニューグレンを使用し、「プロジェクト・カイパー」の低軌道衛星を打ち上げる契約をしています。

- ニューアームストロング: ニューグレンよりもさらに大型のロケットで、月や惑星探査を想定していると推測されていますが、詳細な情報はほとんど公開されていません。

ロケットエンジン

- BE-3: 液体水素と液体酸素を燃料とするエンジンで、最大推力490kNを発揮します。垂直着陸のために出力を調整できます。2013年末までに、160回以上の始動と9,100秒の運転試験をクリアしました。

- BE-3U: BE-3をベースに、軌道周回機の上段用に設計された使い捨てエンジンです。

- BE-4: 液化メタンと液体酸素を燃料とするより大型のエンジンで、推力は2,400kNです。ULAのヴァルカンロケットにも使用されています。

- BE-7: 月着陸船ブルームーンでの使用が想定されているエンジンで、液体水素と液体酸素を燃料とします。月の氷から燃料補給ができる設計です。

宇宙機

- ブルームーン: ブルーオリジンが開発中の月着陸船で、3.6tの貨物を月面へ輸送できます。将来は有人輸送も計画されており、BE-7エンジンを搭載します。NASAのアルテミス計画の月着陸船として採用を目指しましたが、2021年の契約では選定されませんでした。

- オービタル・リーフ: ブルーオリジンが計画する民間宇宙ステーションで、膨張式モジュールによりISSと同規模の広さを持つ予定です。しかし、2023年10月には人員の大半が他のプロジェクトへ異動したと報道されました。

まとめ

ブルーオリジンは、再利用可能なロケット技術の開発や宇宙旅行の商業化、そして月面への有人ミッションといった、宇宙開発における様々な分野で革新的な取り組みを続けています。ジェフ・ベゾスの情熱と技術力が結集されたブルーオリジンの今後の活躍が期待されます。

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