シエラ型原子力潜水艦

シエラ型原子力潜水艦の概要

シエラ型原子力潜水艦（Sierra-class submarine）は、ソビエトおよびロシア海軍に所属する攻撃型原子力潜水艦の一種で、NATOコードネームとして知られています。この艦級は、正式には945型潜水艦（プロジェクト945）と呼ばれ、「バラクーダ」という計画名を持っています。進化型である945A型は「コンドル」と名付けられ、シエラII型というNATOコードネームも付与されています。これらの潜水艦は、1992年以降は一等大型原子力潜水艦という正式な分類に変更されました。

来歴

シエラ型の設計は、ソビエト連邦海軍の戦略に基づいており、「戦略核の運用」、「米空母戦闘群の阻止」、「米国の攻撃型原子力潜水艦の阻止」、および「欧米のシーレーンの破壊」という4つの主要な軍事目標が掲げられていました。1970年代以降、アメリカ海軍の潜水艦の増強により、これらの戦略目標はより重要視され、「米SSBN・SSNの阻止」が最優先とされました。これを受けて、1973年からは国家対潜総合プログラム「アーガス」が立ち上げられ、同時に「ネプチューン」と呼ばれるC4Iシステムの開発がスタートしました。このように、シエラ型潜水艦はソ連の対潜戦略の中で重要な役割を果たすことを目的として設計されました。

1970年代には、ソビエト連邦は原子力潜水艦の船体材料としてチタン合金に注目し、1960年代にその工作技術を確立しました。その結果、1961年には705型（アルファ型）の建造が始まり、1971年からは945型潜水艦の開発に着手されました。この艦は、Materials and Constructionにおいては多くの革新を起こしました。

設計

シエラ型は、671RTM型潜水艦（ヴィクターIII型）の後継として計画されましたが、技術的には685型（マイク型）の実用化モデルに相当します。特に注目すべきは、船体にチタン合金が使用されている点です。この材料により、船殻の重量を従来の高張力鋼に比べて25～30%軽減でき、重量を抑えつつ性能を向上させることが可能になりました。また、チタン合金の特性により、磁気特性が低減され、潜水艦の探知リスクも軽減されました。

シエラ型潜水艦は、複殻構造を採用し、船体は円筒形と円錐形が組み合わさった形状を持ち、艦内は6つの区画に分けられています。特に注意すべき設計点は、685型の実績を踏まえた緊急浮上システムです。このシステムには、多数の固体燃料ガス発生器が搭載されており、深海から迅速に浮上することを可能にしています。

機関と装備

本型の主機は、945型および945A型においてそれぞれ異なる原子炉を搭載しており、出力は43,000馬力から48,000馬力に増強されています。スキュード・プロペラは水中での騒音を抑制するための設計が施されており、この点でも時代の技術の粋を集めたものといえます。

装備に関しては、探信儀や音響信号処理システムを搭載し、探知距離を600キロメートルに達するレベルに高めています。兵装も充実しており、533mmおよび650mmの魚雷発射管、さらに対潜ミサイルや巡航ミサイルを搭載可能です。945A型では弾薬の種類と数が増加しており、より柔軟な戦術が展開できるようになっています。

運用史

シエラ型潜水艦は当初、30隻の建造が計画されていましたが、チタン合金採用のためにコストが高騰し、最終的には建造数が減少しました。ソ連崩壊後も、一部の艦船は更新作業を経て現在も運用されています。特に「カープ」は除籍後の再就役計画が進められており、チタン合金の強度により長期的な耐用が期待されています。また、245型は現在も活発に運用されており、長期修理後でも復帰するなど、その頑強な設計が生きています。これらの要素は、シエラ型潜水艦がどれほど重要な役割を果たしているかを示しています。

このように、シエラ型原子力潜水艦はソ連・ロシアの潜水艦技術の集大成とも言える存在であり、その高性能なデザインや多様な運用能力によって、冷戦時代から現代までの海軍戦力に寄与し続けています。

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