シオン (植物)

シオン（紫菀）について

シオン（学名: Aster tataricus）は、キク科シオン属に分類される多年草です。別名としてオニノシコグサ、ジュウゴヤソウ、オモイグサなどがあります。これらの別名からも、古くから人々に親しまれてきた植物であることが伺えます。

名称

和名であるシオンは、漢名の紫菀（しおん）を音読みしたものです。また、十五夜の頃に花を咲かせることからジュウゴヤソウという別名も持ちます。中国でも紫菀（しおん）と呼ばれています。

花言葉は「追想」であり、その花姿から過去を振り返るような静かな美しさを感じさせます。

分布

シオンは、中国北部、朝鮮半島、シベリアが原産とされています。日本では、本州の中国地方や九州の山間部の湿った草原に自生しています。古くから観賞用として栽培され、庭や鉢植えで見かけることも多く、一部は野生化しています。平安時代には薬用植物として中国や朝鮮から伝わったとされ、観賞用としても栽培されてきました。

形態・生態

シオンは多年草であり、草丈は1.5～2メートルにまで成長します。茎や葉にはまばらに毛が生えており、触ると少しざらついた感触があります。

開花期は夏から秋にかけて（8～10月頃）で、茎の上部で枝分かれし、淡紫色の頭花を散房状に多数咲かせます。花径は3～3.5センチメートルで、周囲には薄紫色の舌状花が一重に並び、中央には黄色の筒状花が咲きます。

保全状況

環境省のレッドリストでは、シオンは絶滅危惧II類（VU）に指定されており、その保全が重要となっています。

利用

シオンの根や根茎には、ラチノフィロール、ラチノフィロールエステル、アネトールなどの精油成分や、シオンサポニン、クエルセチン、シオノンなどの成分が含まれています。

特にサポニンは、水に溶けやすく泡立ちやすい性質を持ち、去痰作用や溶血作用があることが知られています。ただし、過剰に摂取すると内臓粘膜を刺激する可能性もあるため、注意が必要です。

シオンの根は、生薬「紫苑（しおん）」として利用されます。これは、地上部の茎葉が枯れる10～11月頃に根を掘り起こし、水洗いして乾燥させたものです。漢方薬の杏蘇散（きょうそさん）などに配合されています。

民間療法としては、痰きりや咳止めのために、乾燥させたシオンを煎じて服用する方法があります。これは、1日量3～10グラムのシオンを400～600ccの水で煮詰め、半量になったものを1日3回に分けて食間に服用します。体を温める効果があるとされ、冷えにより咳や痰が出る場合に効果的とされています。ただし、肺に熱がある場合や黄色い痰が出る場合、喉が渇く場合は禁忌とされています。また、喘息への効果は期待できません。

栽培

シオンは、地上部の茎葉が枯れる頃に根を掘り起こし、株分けして翌年植え付けます。堆肥や腐葉土を混ぜた土に植え付けるとよく育ちます。

その他

シオンは、その美しい花姿と薬効から、古くから人々に愛されてきた植物です。しかし、近年では自生地が減少し、絶滅の危機に瀕しています。この美しい植物を未来へ繋いでいくために、保護と育成の取り組みが求められています。

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