シカゴ・ノースショアー・アンド・ミルウォーキー鉄道

シカゴ・ノースショアー・アンド・ミルウォーキー鉄道：消えゆく「スーパーインターアーバン」の軌跡

シカゴ・ノースショアー・アンド・ミルウォーキー鉄道、通称「ノースショアー線」は、かつてアメリカ合衆国で活躍したインターアーバン（都市間電気鉄道）でした。イリノイ州シカゴとウィスコンシン州ミルウォーキーを結び、旅客輸送だけでなく貨物輸送も担っていました。その歴史は、19世紀末にウォキーガンで路面電車を運営していた会社に端を発し、20世紀初頭にはシカゴとミルウォーキーを結ぶ大動脈へと成長しました。

誕生と成長：サミュエル・インスルの時代

1916年、実業家サミュエル・インスルが経営権を握ると、シカゴ・アンド・ミルウォーキー電鉄が設立され、ノースショアー線は新たな時代を迎えました。1919年には、シカゴ・ループとミルウォーキー市街地を結ぶ電化路線が開業し、旅客と貨物の輸送を開始。インスルの下で、ノースショアー線はシカゴ地域における他のインターアーバン鉄道も傘下に収め、その路線網を拡大していきました。

高速化とサービスの向上

ノースショアー線は、高速運転と豪華なサービスを追求しました。特に、1920年代初頭には、食堂車やパーラーカー、展望車を連結した「ゴールド・コースト・リミテッド」などの豪華列車を運行。さらに、シカゴ中心部への直通運転を実現し、利便性を大きく向上させました。また、スコーキーバレーを通る新線を建設することで、高速化と輸送能力の増強を図りました。

スコーキーバレー新線の建設

1920年代半ばには、スコーキーバレー新線が完成。この新線は、従来の本線よりも高速走行が可能であり、シカゴとミルウォーキー間の所要時間を大幅に短縮しました。また、新線沿線には、新たな車庫や施設が建設され、ノースショアー線の運営を支えました。スコーキーバレー新線の開業により、ノースショアー線は、より高速で快適な輸送サービスを提供できるようになりました。

世界恐慌と第二次世界大戦

1929年の世界恐慌は、ノースショアー線にも大きな影響を与えました。不況による乗客数の減少や賃金ストライキに見舞われましたが、立体交差化事業などのインフラ整備も進められました。第二次世界大戦中は、軍事輸送需要の増加により、貨物輸送・旅客輸送ともに記録的な輸送量を記録。戦時中の収益は、会社の経営再建に大きく貢献しました。

戦後の衰退と路線廃止

第二次世界大戦後、自家用車の普及とともにノースショアー線の乗客数は激減。運営コストの増大と収入減により、経営は悪化の一途をたどりました。1950年代には、不採算路線の廃止やサービスの縮小が相次ぎ、1955年にはショアーラインが廃止されました。1958年には、州と連邦の規制当局に全路線の廃止を申請するに至りました。度重なる廃止申請の後、1963年1月20日、ついにノースショアー線は全線廃止されました。これは、インターアーバンとしては最後に廃止された路線の一つでした。この路線の廃止は、アメリカのインターアーバン鉄道の歴史に大きな終止符を打つ出来事となりました。

受け継がれる遺産

ノースショアー線の路線の一部は、シカゴ交通局によって再利用されています。現在、シカゴ・Lのイエローラインが、かつてのスコーキーバレー線の線路跡を走っています。また、ノースショアー線を走った車両の一部は、動態保存や静態保存され、その姿を今に伝えています。特に、流線形の特急電車「エレクトロライナー」は、その美しい姿と高速性能で知られ、多くの鉄道ファンに愛されています。作家で鉄道歴史学者のウィリアム・D・メディルトンはノースショア線を「スーパーインターアーバン」と評しましたが、この言葉は、その技術力とサービス水準の高さを示しています。

結び

シカゴ・ノースショアー・アンド・ミルウォーキー鉄道は、その華やかな歴史と革新的な技術で、アメリカの鉄道史に大きな足跡を残しました。その路線は消えましたが、現代の鉄道や交通機関にその影響は今も残っています。廃線後、大部分が撤去された線路跡ですが、一部は歩道として整備され、また、その遺構の一部は保存されており、当時の面影を今に伝えています。

参考資料
Central Electric Railfans' Association (1962). Interurban to Milwaukee. Chicago, Illinois: CERA
Central Electric Railfans' Association (1963). Route of the Electroliners. Chicago, Illinois: CERA

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