シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道

シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道（CRI&P）の歴史

シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道（Chicago, Rock Island and Pacific Railroad、略称CRI&P）は、アメリカ合衆国中西部でかつて存在した主要な鉄道会社です。「ロック・アイランド鉄道（Rock Island Railroad）」、略して「RI」や「ザ・ロック（The Rock）」とも呼ばれていました。その報告記号は「RI」でした。

19世紀の黎明期

CRI&Pの起源は、1847年2月27日に設立されたロック・アイランド・アンド・ラ・サール鉄道（Rock Island and La Salle Railroad Company）に遡ります。その後、1851年2月7日にシカゴ・アンド・ロック・アイランド鉄道（Chicago and Rock Island Railroad）として再編されました。

建設は1851年10月1日にシカゴで開始され、約1年後の1852年10月10日にはシカゴとジョリエットの間で開業しました。工事は継続され、1854年2月22日にはラ・サール、そしてロック・アイランドに到達し、シカゴとミシシッピ川を結ぶ最初の鉄道となりました。

アイオワ州では、1853年2月5日にC&RIがミシシッピ・アンド・ミズーリ鉄道（Mississippi and Missouri Railroad、M&M）を設立し、ダベンポートとカウンシルブラフスを結ぶ計画を立てました。1855年11月20日には、ダベンポートとマスカティーン間でアイオワ州初の鉄道として営業を開始しました。ミシシッピ川を渡る橋は1856年4月22日に完成しました。

1857年、ミシシッピ川を航行中の蒸気船が鉄道橋に衝突して炎上する事故が発生しました。船の所有者はRIを訴え、当時弁護士であったエイブラハム・リンカーンがRIの弁護を担当しました。リンカーンは、橋が国益に貢献しており、事故の責任は蒸気船側にあると主張しました。

1866年、C&RIはM&Mを買収し、シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道（CRI&P）が誕生しました。その後、CRI&Pは路線建設や買収を重ね、その路線網を拡大していきました。

広大な路線網

RIの路線は、アーカンソー州、コロラド州、イリノイ州、アイオワ州、カンザス州、ミズーリ州、ネブラスカ州、ニューメキシコ州、オクラホマ州、テキサス州にまで及びました。東端はシカゴ周辺の鉄道網とテネシー州メンフィス、西端はコロラド州デンバーとニューメキシコ州サンタローザ、南端はテキサス州ガルベストンとルイジアナ州ユーニスに接続していました。北端はミネソタ州ミネアポリスまで到達していました。

主要な幹線としては、ミネアポリスからアイオワ州デモインを経てミズーリ州カンザスシティに至る路線、ミズーリ州セントルイスからカンザスシティを経てサンタローザに至る路線、カンザス州ハーリントンからテキサス州フォートワースとダラスを経てガルベストンに至る路線、そしてサンタローザからメンフィスに至る路線がありました。

最も輸送量が多かったのは、シカゴ～ロック・アイランド間と、ロック・アイランド～アイオワ州マスカティーン間でした。

旅客輸送

RIは、サザン・パシフィック鉄道（SP）と共同で、「ゴールデン・ステート・リミテッド」を運行していました。この列車は、シカゴからカンザスシティ、トゥクムカリ、エルパソを経由してロサンゼルスを結ぶもので、1902年から1968年まで運行されました。1948年のディーゼル化に伴い、列車名は「ゴールデン・ステート」と短縮されました。

また、SPとは「ゴールデン・ロケット」という列車を共同運行する計画もありましたが、SPが計画から撤退したため実現には至りませんでした。しかし、ゴールデン・ロケット用に計画された独特の塗装は、ゴールデン・ステートに採用されました。

1937年、RIは旅客列車牽引用にディーゼル機関車を導入しました。同時に、軽量な流線型車両「ロケット（Rock Island Rockets）」を6両購入し、中西部を中心に展開しました。

代表的なロケットには以下のようなものがありました。

ロッキー・マウンテン・ロケット：シカゴ-オマハ-リンカーン-デンバー-コロラドスプリングス
コーン・ベルト・ロケット：シカゴ-デモイン-オマハ
ツイン・スター・ロケット：ミネアポリス-セントポール-デモイン-カンザスシティ-オクラホマシティ-フォートワース-ダラス-ヒューストン
ゼファー・ロケット：ミネアポリス-セントポール-バーリントン-セントルイス
チョクトー・ロケット：メンフィス-リトルロック-オクラホマシティ-アマリロ-トゥクムカリ

アムトラック発足時、RIは同システムには参加せず、自社で旅客列車を運行し続けました。シカゴ-ピオリア間の「ピオリア・ロケット」とシカゴ-ロック・アイランド間の「クアド・シティズ・ロケット」の運行コストが、アムトラックに参加するコストと同等であると判断したためでした。これらの列車は、1978年末まで運行されました。

終焉

1964年、RIはユニオン・パシフィック鉄道（UP）との合併を目指しましたが、州際通商委員会による複雑な手続きのために、合併は難航しました。10年以上の研究や裁判所での審理を経て、UPとRIは合意に至りましたが、その間にRIの財政状態は悪化。UPは合併契約を破棄しました。

1975年3月17日、RIは三度目の倒産を宣告されました。管財人にはウィリアム・ギボンズが選任され、1979年8月には鉄道・航空乗務員組合によるストライキが発生。事態はさらに悪化し、1980年1月24日、裁判所はRIの再建は不可能であると判断し、清算されることになりました。

結果として、RIはアメリカ鉄道史上最大の倒産となり、1980年3月31日には最後の列車が運行されました。その後、RIの資産は売却・解体されました。

RIの持株会社であるシカゴ・パシフィック・コーポレーションは、1985年にメイタグに買収されました。かつての幹線であったシカゴからオマハへの路線は、新たに設立されたアイオワ・インターステート鉄道（Iowa Interstate Railroad、IAIS）に売却されました。

文化への影響

RIは、音楽や映画にもその名を残しています。

レッドベリーのフォークソング「ロック・アイランド・ライン」
ミュージカル「ザ・ミュージック・マン」の冒頭曲「ロック・アイランド」
映画「許されざる者」の主人公がRIを爆破したという設定
映画「ロック・アイランド・トレイン」

これらの作品を通じて、RIの存在は広く知られることとなりました。

脚注

Rock Island Technical Society Home Page
Trainweb
History of the song (インターネットアーカイブ)
アーカンソー州におけるRI
1854 Grand Excursion
Andover Junction Publications Remember the Rock magazine Home Page
Rock Island System Map

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