シクロペンタデカノリド

シクロペンタデカノリド（エグザルトリド）

シクロペンタデカノリドは、化学式C₁₅H₂₈O₂で表される大環状化合物です。15-ペンタデカノラクトン、オキサシクロヘキサデカン-2-オンとも呼ばれ、一般的にはエグザルトリドという名称で知られています。

この物質は、特有の麝香臭を持つ合成ムスクの一種であり、調合香料において重要な役割を果たしています。その香りは、天然のムスクに似た深みと奥行きがあり、多くの香水の調合に用いられています。

天然における存在

シクロペンタデカノリドは、天然ではアンゲリカ（セイヨウトウキ）の根の油に含まれていることが知られています。ただし、天然からの抽出は効率が低いため、工業的には主に合成法によって製造されています。

合成法

シクロペンタデカノリドのような大環状化合物の合成は、分子内閉環や環拡大など様々な方法が研究されてきました。しかし、工業的な大量生産においては、アゼライン酸半エステルを出発原料とする重合-解重合法が広く用いられています。この方法は、ウォーレス・カロザースがナイロンの研究中に1935年に発見した手法です。

具体的な合成経路は、まずアゼライン酸半エステルをコルベ電解によってジエチルエステルに変換します。その後、銀塩への変換、ハンスディーカー反応によるブロモ化、そして最終的に環状化重合と解重合を経てシクロペンタデカノリドが得られます。

その他、ドデカンジオールやウンデシレン酸からの合成、あるいはオキサビシクロアルケンからの環拡大法なども研究されてきましたが、これらは工業的な生産規模には至っていません。

歴史

シクロペンタデカノリドは、1927年にM.Kerschbaumによって発見されました。彼はアンゲリカの精油の高沸点部分から、麝香の香りを有するこの物質を単離しました。この発見は、合成ムスクの研究に大きな進歩をもたらし、その後、様々な合成法が開発され、現在では広く利用される香料となっています。

利用

シクロペンタデカノリドは、調合香料の保留剤として広く利用されています。保留剤とは、香りの持続性を向上させるための成分です。通常、香水の配合においては1～5%程度の割合で使用されます。

また、食品香料としても使用されることがあります。ベリー、ブドウ、洋梨、ナッツ、バニラ、洋酒、ワインなど、様々なフレーバーに0.1～1.5ppmの割合で添加されることがあります。ただし、食品用途での使用は、調合香料に比べて量は少ないです。

まとめ

シクロペンタデカノリド(エグザルトリド)は、その特有の麝香臭と香りの持続性から、香水や食品香料など幅広い用途を持つ重要な合成香料です。天然由来成分としての側面と、効率的な工業的合成法の確立により、現代の香料産業に大きく貢献しています。

もう一度検索