ジシアン

ジシアン：性質、製造、用途、安全性

ジシアン (dicyan, C₂N₂) は、別名シアノゲン、シュウ酸ジニトリル、あるいは単にシアンとも呼ばれる化合物です。2つのシアノ基が炭素原子で結合した構造(NCCN)を特徴とし、異性体としてイソシアノゲン(NCNC)やジイソシアノゲン(CNNC)も存在します。

ジシアンの性質

常温では特有の臭気を有する無色の気体です。冷水と反応してシアン化水素とシアン酸を生成するなど、ハロゲン分子(X₂)に似た性質を示す擬ハロゲンとして知られています。エーテルへの溶解度が高く、塩酸中でスズと反応させるとエチレンジアミンに還元されます。

特筆すべきは、その燃焼特性です。酸素との最適混合気を燃焼させると桃色の炎を上げ、なんと4600℃という極めて高温になります。これは、燃焼によって水が生成されないためです。アセチレンのように燃焼で水が生成されると、3000℃付近で水分子が解離し、それ以上の高温には到達しません。ジシアンの燃焼反応は以下の通りです。


C₂N₂ + 2O₂ → 2CO₂ + N₂

ジシアンの製造方法

ジシアンは様々な方法で合成できます。実験室レベルでは、シアン化水銀などの重金属塩の熱分解が一般的です。


2Hg(CN)₂ → C₂N₂ + Hg₂(CN)₂


また、硫酸銅(II)などの二価銅水溶液にシアン化物を加えると、不安定なシアン化銅(II)が生成し、速やかにシアン化銅(I)とジシアンに分解します。


2CuSO₄ + 4KCN → C₂N₂ + 2CuCN + 2K₂SO₄


その他、オキサミドの脱水、炭素と窒素の高温加熱、シアン化水素の酸化（塩素と二酸化ケイ素触媒、または二酸化窒素と銅化合物を使用）、窒素とアセチレン混合気への放電など、様々な合成法が知られています。

パラシアン

ジシアンは高温で長時間加熱すると、重合体であるパラシアンを生成します。この重合は光によって促進されます。パラシアンは不溶性の黒褐色粉末で、800℃以上に加熱すると再びジシアンを遊離します。

ジシアンの歴史

ジシアンは、スウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが紺青から初めて単離しました。その後、1815年にジョセフ・ルイ・ゲイ＝リュサックが合成し、実験式を決定、ギリシャ語の[瑠璃色]に因んでcyanogèneと命名しました。19世紀後半の肥料工学の発展に伴い重要性を増し、現在でも化学肥料生産における重要な中間産物として利用されています。ニトロセルロース生産における安定剤としても使用されています。

ジシアンの安全性

ジシアンは、他の無機シアン化合物と同様に高い毒性を持ちます。還元によりシアン化水素を生成し、ミトコンドリアの呼吸を阻害します。また、眼や呼吸器への刺激性も強いです。吸引すると頭痛、めまい、頻脈、吐き気、嘔吐、意識喪失、痙攣を引き起こし、死に至る可能性があります。取り扱いには細心の注意が必要です。

参考文献

(ここに参考文献を記載)

関連項目

シアン化物
擬ハロゲン

外部リンク

* (ここに外部リンクを記載)

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