紺青

紺青（プルシアンブルー）詳解：歴史、性質、用途、そして安全性

紺青、別名プルシアンブルーは、深みのある青色を呈する顔料です。鉄のシアノ錯体に過剰の鉄イオンを加えることで生成され、古くから絵画や様々な用途に用いられてきました。天然顔料である岩紺青と区別するため、花紺青と呼ばれることもありますが、一般的にはスマルトを指します。カラーインデクス名は「ピグメント・ブルー・27」です。

多彩な呼び名と歴史

その製法や由来から、アイアンブルー、ベルリンブルー、ターンブルブルーなど、数多くの異名を持ちます。日本ではベルリン藍がなまってベロ藍と呼ばれ、歌川広重や葛飾北斎の作品にも用いられたことから、「広重ブルー」「北斎ブルー」「ジャパンブルー」といった呼称も存在します。

1704年、ベルリンで偶然発見されたとされています。当時、ヨーロッパではアズライトが青色顔料として流通していましたが、ドイツなど北部では入手困難でした。高価なウルトラマリンに代わり、紺青はすぐに広く普及し、陶磁器の彩色などにも使われるようになりました。当初は製造方法が秘匿されていましたが、1724年にジョン・ウッドワードが製造法を発表したことで、広く知られるようになりました。

日本への伝播と絵画への影響

日本では、平賀源内が『物類品隲』（1763年）で紹介しました。伊藤若冲が『動植綵絵』で初めて使用した記録が残っています。1826年頃からは、清国商人による大量輸入で普及が進みます。葛飾北斎の「富嶽三十六景」で用いられたことで有名になりましたが、これは天保の改革による奢侈禁止令や価格下落が普及の背景にあったと考えられています。北斎より先にベロ藍を用いたのは、弟子の渓斎英泉でした。

化学的・物理的性質

紺[青]]はヘキサシアニド鉄]酸[鉄]という[錯体で、Fe₄[Fe(CN)₆]₃という理想的な組成式を持ちます。しかし、実際には結晶水を含んだり、鉄イオンが置換していたりするため、一定の組成を得ることは困難です。ヘキサシアニド[[鉄]酸塩と[鉄]塩から得られたものをプルシアンブルー、ヘキサシアニド[鉄]酸塩と[鉄]塩から得られたものをターンブルブルーと区別することもありましたが、どちらも同一の化合物であることが確認されています。

結晶構造は、Fe³⁺イオンが面心立方格子を形成し、その中点にFe²⁺イオン、その間にCN⁻イオンが位置する特徴的な構造をしています。この構造を持つ一群のシアン錯体の塩を、プルシアンブルー型錯体と呼びます。多くのものは強磁性やフェリ磁性を示します。

多様な用途と安全性に関する懸念

紺青は顔料として、単独で藍色・紺色の塗料、絵具、印刷インキ、青写真などに使用されます。黄鉛などの黄色顔料との混合物は緑色顔料となり、クロムグリーンやカドミウムグリーンなどと呼ばれます。

ゴルフ場の芝の着色剤としても使用されますが、微細な粒子のため吸入による塵肺のリスクがあります。そのため、樹脂で固めた粒子状で使用されることもあります。

医薬品としても利用され、放射性セシウムの結合剤として、経口投与でセシウム137の排出を促進する効果があります。しかし、水不溶性で微細な粒子であるため、吸入による肺への沈着、内部被曝のリスクも伴います。そのため、使用は厳しく制限されています。タリウム中毒の治療にも用いられます。

紺青はCN⁻イオンを含みますが、通常は毒性はありません。しかし、熱やアルカリに弱く、シアン化合物を遊離する可能性があります。そのため、環境関連法規においても規制の対象となる場合があります。土壌汚染対策法では特定有害物質に指定されており、廃棄物の処理には注意が必要です。微細な粒子のため、飛散による塵肺のリスク、また放射性セシウムとの結合による内部被曝リスクも懸念されます。熱分解によりシアンガスが発生するため、焼却も危険です。

過去の工場廃棄物による土壌・地下水汚染事例もあり、環境への影響を考慮した適切な管理が必要です。

紺青の発見を描いた作品

ジャン＝リュック・アングルベール作の絵本『あおを はっけんした ちいさな ヤン』は、紺青の発見をテーマにした作品です。

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