シスター・ロゼッタ・サープ

シスター・ロゼッタ・サープ：ロックンロールの先駆者

シスター・ロゼッタ・サープ（1915年3月20日 - 1973年10月5日）は、アメリカの歌手、ソングライター、そして卓越したギタリストでした。1930年代から1940年代にかけて、ゴスペル音楽とジャズ、ブルースを融合させた独自のスタイルを確立し、その後の音楽シーンに大きな影響を与えました。彼女の音楽は、宗教的なメッセージと世俗的な音楽の境界を越え、スピリチュアルな音楽を大衆の前に押し出す役割を果たしました。

音楽的特徴と影響

サープの音楽の特徴は、スピリチュアルな歌詞をリズミカルな伴奏に乗せた演奏にあります。特に、女性ギタリストが稀だった時代に、彼女のギターテクニックは称賛を集めました。エレクトリック・ギターをいち早く取り入れ、ディストーションなどの革新的な技法を駆使した彼女のスタイルは、リトル・リチャード、ジョニー・キャッシュ、チャック・ベリー、エルヴィス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイスなど、後のロックンロールを代表するアーティストに多大な影響を与えました。

サープは、ゴスペル、リズム・アンド・ブルース、そしてロックンロールというジャンルを超えて活躍し、「ロックンロールの母」や「ソウルシスターの元祖」として知られています。1964年には、マディ・ウォーターズらとヨーロッパツアーを行い、マンチェスター公演ではエリック・クラプトンやジェフ・ベック、キース・リチャーズといった後の伝説的なギタリストたちが彼女の演奏に触発されました。

生い立ちと初期のキャリア

ロゼッタ・ヌビンとしてアーカンソー州で生まれたサープは、幼少期から母親の影響で教会音楽に触れて育ちました。4歳から歌とギターを始め、6歳には母親とともに伝道旅行で演奏を始めました。1920年代半ばにはシカゴに移住し、教会を中心に活動を続け、その才能は広く知られるようになりました。1934年には宣教師のトーマス・サープと結婚しましたが、後に離婚。しかし、シスター・ロゼッタ・サープの名で活動を続けました。

黄金期の活躍

1938年、デッカ・レコードからラッキー・ミリンダー楽団との共演で初のレコーディングを行い、「ロック・ミー」などのヒット曲をリリースしました。これらの曲は、ロックンロールの初期のアーティストたちにも影響を与え、サープは商業的に成功した最初のゴスペルアーティストとなりました。

彼女の音楽スタイルは、一部の宗教コミュニティからは批判を受けましたが、彼女は自身のスタイルを貫き、様々なミュージシャンとの共演やツアーを通じて、その名を広めました。また、ギターという楽器が当時男性的なものとされていた中で、彼女は卓越した演奏技術でそれを覆し、「男のような」演奏と称賛されました。

1944年には「ストレンジ・シングス・ハプニング・エブリデイ」をリリースし、この曲はロックンロールの原点の一つとして評価されています。1946年からはマリー・ナイトとゴスペルツアーを行い、ヒット曲を連発しましたが、その関係がゴシップの対象になることもありました。

1950年代以降も、サープは精力的に活動を続け、1964年のヨーロッパツアーは、ロックンロールの歴史に大きな影響を与えました。特にマンチェスター公演は、多くの若手ギタリストに影響を与え、その様子はテレビで放映されました。

晩年と死

1970年に脳卒中を患い、演奏機会は減少しましたが、彼女の音楽は後世に受け継がれました。1973年10月9日、フィラデルフィアで脳卒中の再発により亡くなりました。

音楽的遺産

サープの音楽は、ロックンロールのルーツを語る上で欠かせない存在です。彼女のギター演奏、歌唱スタイル、ステージパフォーマンスは、多くのミュージシャンに影響を与え、その功績は今日においても高く評価されています。

彼女の音楽は、ボブ・ディランをはじめ、アレサ・フランクリン、ジェリー・リー・ルイス、アイザック・ヘイズなど、多くのアーティストに影響を与えました。また、2018年にはフランク・ターナーが「シスター・ロゼッタ」と題した楽曲を発表し、彼女の功績を称えました。

受賞歴と評価

1998年には、アメリカ郵政公社が彼女を記念した切手を発行し、2007年にはブルースの殿堂入りを果たしました。2017年にはロックンロールの殿堂入りを果たし、その功績が改めて認められました。彼女の音楽は、今日においても多くの人々に愛され、その影響力は計り知れません。

ディスコグラフィー

彼女のアルバムには、以下のようなものがあります。

Gospel Songs (1947年)
Blessed Assurance (1951年)
Gospel Train (1956年)
The Gospel Truth (1959年)
Sister Rosetta Tharpe (1960年)
Spirituals in Rhythm (1960年)
Sister on Tour (1961年)
Precious Memories (1968年)
Gospel Keepsakes (1983年)
Live in 1960 (1991年)
* Live at the Hot Club de France (1991年)

サープの音楽は、ロックンロールの歴史において、非常に重要な役割を果たしたことを忘れてはならないでしょう。

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