シソワット・モニヴォン

シソワット・モニヴォン：激動の時代を生きたカンボジア国王

シソワット・モニヴォン（Sisowath Monivong, 1875年12月27日 - 1941年4月24日）は、1927年から1941年までカンボジア国王として在位しました。彼の治世は、フランスの植民地支配、共産主義の台頭、そして第二次世界大戦という激動の時代と重なりました。

生い立ちとフランスとの関わり

1875年、モニヴォンはプノンペンでシソワット副王の次男として生まれました。当時のカンボジアは、彼の伯父であるノロドム王の治世下にありましたが、隣国タイやベトナムからの圧力に抗しきれず、1863年にフランスの保護国となりました。その後、1887年にはラオスやベトナムと共にフランス領インドシナの一部に組み込まれました。モニヴォンの父シソワットは1904年に王位を継承。

モニヴォンは、フランスとの深い関わりを持つことになります。1906年には父王と共にフランスを訪問し、サンメクサン士官学校に入学。1908年に卒業後は、フランス外人部隊に中尉として任官し、ブリーブ、後にパリへと配属されました。1909年にカンボジアへ帰国して軍の中尉となり、1910年には大佐、1922年には大隊長へと昇進した後、軍務から退きました。第一次世界大戦中には、志願兵を積極的に集めるなど、フランスのために貢献しました。

国王即位と植民地支配

1927年、父王の崩御を受けて51歳で国王に即位。しかし、当時のカンボジアはフランスの植民地体制下にあり、王位は名目的なものに過ぎず、実質的な権力はフランス人総督が握っていました。モニヴォン王の治世下では、カンボジアにも共産主義の影響が及び始め、1930年にはホー・チ・ミンがベトナムで設立したインドシナ共産党がカンボジア国内でも支持を広げていきました。共産主義勢力は、フランス勢力打倒を目指して活動を活発化させていきました。

1932年には、フランスによってプノンペン - プルサト間に鉄道が開業し、開通式にはモニヴォン王も出席しました。

第二次世界大戦と領土割譲

1940年、フランスがナチスドイツに降伏すると、ヴィシー政府がカンボジアを含む海外植民地を支配下に置きました。しかし、1941年には日本軍がカンボジアに進駐し、カンボジアは日本の管理下でフランス勢力が実権を握るという二重権力構造となりました。日本の動きに同調したタイもカンボジア領内に侵攻し、タイ・フランス領インドシナ紛争が勃発。日本の調停によりタイ・フランスは平和条約（東京条約）を結びましたが、その結果カンボジアは領土の一部（チャンパーサック県・バタンバン州・シェムリアップ州など）をタイに割譲させられることになりました。

これらの情勢を前に、モニヴォン王は無力でした。また、健康状態も悪化し、1941年に滞在先のカンポットで崩御しました。後継国王には、モニヴォン王の長男モニレットが有力視されていましたが、フランス総督の指名により、モニヴォン王の孫（コサマック王女の長男）であるシハヌークが即位することになりました。

家族とポル・ポトとの関係

モニヴォン王は多くの妻を持ち、少なくとも6人が王子女を出産したことが公認されています。そのうちの一人に、王宮舞踊団の踊り手だったルク・クン・メアクという女性がいました。1934～1935年頃、彼女の幼いいとこが2人、地方からプノンペンへ出てきて彼女のもとで暮らしていましたが、そのうちの1人が後のポル・ポト（本名サロト・サル、当時6～7歳）でした。

人物像

孫のシハヌークによると、モニヴォン王は「ハンモックに寝ながら、フランス人が持ってきた書類を中身も確認せずただ機械的にサインするだけの存在」だったと評されています。これは、植民地支配下における国王の象徴的な立場を物語るエピソードと言えるでしょう。

参考文献

ミルトン・オズボーン 『シハヌーク－悲劇のカンボジア現代史』 岩波書店、1996年。

外部リンク

カンボヂア国王の葬儀＜週間話題＞ - NHK放送史

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