シトゥ・ギントゥン

シトゥ・ギントゥンの歴史と2009年の洪水

シトゥ・ギントゥン（スンダ語: Situ Gintung）は、インドネシアのバンテン州南タンゲランに位置する池です。この池は、もともと存在していたもので、1933年にオランダ東インド会社の手によりダムが建設され、高さ16メートル（52フィート）の構造物になりました。このダムによって、2,000,000立方メートル以上の水を溜める能力を持つことができ、当初は田畑の灌漑を目的としていました。しかし、ジャカルタに近いことから周囲の開発が進み、その用途は時と共に変化しました。

ダムの周辺地域に住む住民は常に漏水の問題に不満を持っており、特に2008年11月にはダムにひび割れが見つかりましたが、幸いにもその時は大きな事故には至りませんでした。ただし、それ以降のダムの補修と管理は杜撰であったと考えられています。

2009年3月の大洪水

2009年3月26日から27日にかけて、この地域には数時間に渡り激しい雨が降り続けました。その結果、シトゥ・ギントゥンの水位は急激に上昇しましたが、放流設備が非常に小さかったため、その水を適切に管理することができませんでした。水位がダムの貯留限界を超えた結果、現地時間の3月27日午前2時頃に70メートル（230フィート）に及ぶダムの決壊が発生しました。

ダムのひび割れは、その前日から視認できていたにも関わらず、管理者は危険信号を発したものの、決壊の寸前までそれに対する適切な対応が取られませんでした。結果として、越水し、ゴミが巻き上がり、大波となってチレンドゥの集落を襲い、多くの住居や車両、道路を押し流しました。

この際、ほとんどの住民は眠っている最中であり、2.5メートル（8.2フィート）の洪水が集落を直撃しました。多くの人々は高所へ逃げ、屋根の上に避難する人々も少なくありませんでした。最終的に、この洪水によって98人の命が奪われ、さらに5人が亡くなる結果となりました。約400軒の住宅が水没し、そのうち250軒は損壊または全壊の被害を受け、171人が避難を余儀なくされました。また、5か所の発電所も浸水し、水道も停止してしまうという深刻な事態が発生しました。

インドネシア政府は、近隣の大学キャンパスに避難を指示し、陸軍は生存者の救出活動や遺体の回収に従事しました。首相のスシロ・バンバン・ユドヨノや副首相のモハマッド・ユスフ・カラ、経済担当調整相のアブリザル・バクリーも現地を訪れ、被害を受けた家屋の修繕費用を政府が拠出する意向を示しました。ダムの緊急修理に加え、同様のダムの調査も行われることになり、ユドヨノ首相は職務怠慢が見られたダムの管理者を処罰する考えを明らかにしました。

もしも、この凶器となったダムが建設された当初から適切な管理と修繕が行われていれば、甚大な被害を防げた可能性が高いという見解もあります。実際、2007年のジャカルタ洪水時にも近隣が被害を受け、多数の犠牲者が出ています。ユドヨノ首相は「更なる洪水を防ぐための対策を講じて、ダムを再建する」と誓ったことが印象的です。この悲劇を教訓に、今後はインフラ整備に一層注力する必要があると言えるでしょう。

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