シトロエン・GT by シトロエン

GT by シトロエンは、2008年パリモーターショーで発表された、シトロエンとゲーム『グランツーリスモ』シリーズ開発元であるポリフォニー・デジタルのコラボレーションによって生まれたコンセプトカーです。シトロエンのデザイナー、山本卓身氏の手によるデザインは、東洋の甲冑を思わせる独特のフォルムが特徴で、21世紀のスポーツカー像を具現化した、他に類を見ない前衛的なスタイルとなっています。

この車両は、電気自動車として開発されましたが、そのパワートレインに関する詳細は一切公開されていません。当初は限定生産、販売される計画もあったようですが、収益性の問題から実現には至りませんでした。しかしながら、実走可能な車両が存在しており、ロンドン市内でのデモ走行の様子も確認されています。

GT by シトロエンは、単なるコンセプトカーとしてだけでなく、数々のレースゲームに登場することで、広く知られる存在となりました。まず、そのデビュー作となった『グランツーリスモ5プロローグ』を皮切りに、『グランツーリスモ5』、『グランツーリスモ6』、『グランツーリスモSPORT』、『グランツーリスモ7』と、シリーズを通して長きに渡り収録され続けています。

『グランツーリスモ5』と『グランツーリスモ6』では、コンセプトカーとしての「GT by シトロエン コンセプト '08」に加え、ロードカーに改良された「GT by シトロエン ロードカー」と、レーシングカー仕様の「GT by シトロエン レースカー」が登場しました。これらのロードカーとレーシングカーは、V型8気筒ガソリンエンジンを搭載したモデルとしてゲーム内に再現されています。これは、コンセプトカーとは異なる、架空のエンジンを搭載したバリエーションといえます。

『グランツーリスモSPORT』と『グランツーリスモ7』では、「GT by シトロエン Road Car」、「GT by シトロエン Race Car (Gr.3)」に加えて、新たに「GT by シトロエン Gr.4」が登場しています。一方、初期のコンセプトカーである「GT by シトロエン コンセプト '08」はこれらの作品からは姿を消しています。

さらに、GT by シトロエンは、グランツーリスモシリーズ以外のゲームにも登場しています。ゲームロフトの『アスファルト8:Airborne』（バージョン2.8.0以降）、『アスファルト9:Legends』、そしてユービーアイソフトの『ザ・クルー2』といった、異なるメーカーのレースゲームにも収録されており、その存在感はゲームの世界においても大きなものとなっています。

このように、GT by シトロエンは、その独創的なデザインと、ゲームへの継続的な登場によって、現実と仮想世界の両方で、人々を魅了し続けている、非常にユニークな存在と言えるでしょう。実車が存在するにも関わらず、その詳細なスペックが明かされていない点も、謎めいた魅力を高めているのかもしれません。 市販化はされませんでしたが、ゲームを通じて多くの人にその存在を知らしめ、影響を与え続けた、印象的なコンセプトカーとして、自動車史に名を刻んでいると言えるでしょう。

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