シドニー・ウェッブ

初代パスフィールド男爵シドニー・ウェッブ

シドニー・ウェッブ（Sidney James Webb, 1st Baron Passfield）は、1859年7月13日にロンドンで誕生したイギリスの政治家であり、著名な思想家でもあります。彼は1947年10月13日に亡くなりましたが、その生涯を通じて社会改革への強い信念を持って活動しました。

ウェッブは、労働党の前身であるフェビアン協会の設立に深く関与した人物として知られています。彼はその主なメンバーとして、漸進的な社会改革を提唱し、特に労働者の権利向上に向けた政策の推進に力を入れました。彼の考え方は、当時のイギリスにおける政治思想に大きく影響を与え、その後の政治的動きにも受け継がれました。

ウェッブは、バークベック・カレッジやキングス・カレッジ・ロンドンでの学びを生かし、植民地省の高級官僚としてそのキャリアをスタートさせました。その後、1895年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）を創設し、同校で行政学の教授として教鞭を執りました。彼の著書『産業民主制論』では、労働者に対する最低賃金や労働時間の規制、衛生管理、義務教育といった基本的な生活条件を国家が保障することが国民経済の発展に寄与するとの見解を示しました。これらの考え方は、後のピグーやベヴァリッジの理論にも影響を与えていきます。

フェビアン協会における彼の活動は、労働組合とは少し距離を置いたものとされ、労働代表委員会から労働党への展開を推進しました。ウェッブは、労働党員として党内での重要な役職を歴任し、1922年には下院議員に選出されました。その後、1924年の初代労働党内閣が結成された際には商務大臣に就任し、1929年にパスフィールド男爵に叙され、貴族院議員に加わりました。

その後もウェッブは、ラムゼイ・マクドナルドによる第2次労働党内閣で植民地相として活動しますが、1929年以降は大恐慌の影響を受け、彼の見解は社会主義に傾倒するようになります。彼はその後も思想的に多くの著作を残し、労働組合や社会政策に関する評価を受け続けました。

ウェッブの代表的な著作には、『資本主義文明の凋落』や『民族の共栄』、さらには妻のビアトリス・ウェッブとの共著による『労働組合運動史』などがあり、多くの翻訳が日本においても出版されています。

ウェッブは子供を持たなかったことから、彼の死後、パスフィールド男爵家は一代で廃絶しました。しかし、彼の社会改革に対する考えは、現在の政治思想の中で生き続けています。彼が提唱した過程は、長い時間をかけて社会全体を変えていく意義を持ち、今の労働者の場所を確保したのです。

彼の功績はただの政治家としての枠を超え、社会の根底に変革をもたらした思想家として今なお評価されています。

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