シドニー・パジェット

シドニー・エドワード・パジェットとは

シドニー・エドワード・パジェット（1860年10月4日 - 1908年1月28日）は、ヴィクトリア時代のイギリスで活躍した著名なイラストレーターです。日本では「パジット」とも表記されることがありますが、彼の名が広く知られるようになったのは、アーサー・コナン・ドイルによる『シャーロック・ホームズシリーズ』の挿絵を手がけたからです。

経歴

パジェットは九人兄弟の中で五番目に生まれ、父親は聖ジェイムズ教会と聖ジョン教会で教区会書記を務めたロバート・パジェットでした。母親は音楽教師のマーサ・パジェットで、彼はロンドンのクラーケンウェルで育ちました。初等教育はカウパーのロンドン・ミドル・クラス・スクールで受けた後、ヒーザリー芸術学校に通い、その後1881年には王立芸術学院に入学しました。そこでいた友人と共に多くの絵画を制作し、展覧会にも出展しました。

彼の絵は『ストランド・マガジン』や他の数多くの雑誌に掲載され、徐々にその名は広がりました。特にアーサー・モリスンの探偵作品の挿絵や、ドイルの『シャーロック・ホームズシリーズ』を担当することで人気を博しました。

1893年にはエディス・ハウンズフィールドと結婚し、4人の娘と2人の息子をもうけましたが、晩年は病気に苦しみ、1908年にマーゲイトで亡くなりました。彼の遺体はロンドンのイースト・フィンチリー墓地に埋葬されています。

『ストランド』誌での活動

シドニー・パジェットは、『シャーロック・ホームズ』の挿絵を描いたことからその名が広まったと言えます。彼がこの仕事を始めた経緯は興味深く、実は弟のウォルター・パジェットと交渉するはずが、手違いでシドニーに依頼が来たという背景があります。その結果、彼の描くホームズ像が多くの人々に親しまれることとなりました。

1901年から1902年にかけて連載された『バスカヴィル家の犬』では、特にドイルからパジェットが希望され、その後も短編集『シャーロック・ホームズの帰還』などで彼のイラストが掲載されました。最終的に、彼が制作したホームズ関連の挿絵は356枚に及ぶとされています。

パジェットの描くホームズ像は、今やほとんどの人が思い描く「シャーロック・ホームズ」と一致しています。特に鹿撃ち帽とインヴァネス・コートを身に着けたスタイルは、彼が初めて提案したものとされています。これに対し、ドイルの作品にはそのような具体的な描写は存在していません。このファッションは、物語内で徐々に確立されていったものです。

影響と評価

彼の挿絵は、時を経てもなお多大な影響を与え続けています。パジェットが描いたダイナミックで翳のあるイラストは、後にアメリカの探偵映画やノワール・フィルムに影響を与えたとも言われています。また、彼の作品は出版史においても貴重なコレクターズ・アイテムとなっており、パジェットが描くホームズ関連の作品の再版が続く中、彼のスタイルは後世のアーティストや制作者にとって一つの基準ともなりました。

パジェットによる肖像画や挿絵は、今後もシャーロック・ホームズのイメージを語る際に欠かせない存在であり続けるでしょう。

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