アーサー・モリスン

アーサー・ジョージ・モリスン（Arthur George Morrison, 1863年11月1日 - 1945年12月4日）は、イギリスの多才な人物であり、ジャーナリスト、作家、推理作家、そして東洋美術の蒐集家として知られています。

生い立ちと初期のキャリア
1863年、ロンドンのイースト・エンドで生まれたモリスンですが、少年時代や教育に関する詳しい記録は残されていません。1886年から1890年まで事務員として働いた後、彼はジャーナリズムの世界へと転身し、『ナショナル・オブザーヴァー』に所属しました。この時期に、モリスンはさまざまな記事を執筆するとともに、ロンドンのスラム街を舞台にした作品を発表し、作家としての足掛かりを築きました。彼の作品は、当時の社会問題をリアルに描き出し、読者からの評判を呼びました。

作家としての飛躍
モリスンは、スラム街の生活を描いた小説を数多く発表し、作家としての名声を確立しました。彼の作品は、社会の底辺で生きる人々の苦悩や葛藤を深く掘り下げており、当時の社会に対する強い問題提起となっていたと言えるでしょう。また、彼は東洋美術の専門家としても知られており、蒐集した美術品は現在、大英博物館に収蔵されています。彼の美術品に対する深い知識と情熱は、文化的な側面においても重要な貢献となりました。

推理小説への挑戦
1894年にシャーロック・ホームズが「最後の事件」で一旦連載を終了すると、『ストランド・マガジン』はその後を埋めるべく、モリスンに新たな推理小説の連載を依頼しました。これを受けて、1894年から1903年にかけて、探偵マーチン・ヒューイットが登場する推理小説が連載されることとなりました。マーチン・ヒューイットは、超人的な能力を持つわけではない平凡な探偵でありながら、ロンドンの風俗描写やシドニー・パジェットの挿絵によって人気を博しました。モリスンの推理小説は、後年ヴァン・ダインをはじめとする多くの評論家からも高く評価されています。彼の推理小説における緻密なプロットや、当時の社会状況を反映したリアルな描写は、他の推理作家たちに大きな影響を与えました。

主な著作

マーティン・ヒューイットシリーズ:
1894年 - 『Martin Hewitt, Investigator』
1895年 - 『The Chronicles of Martin Hewitt』
1896年 - 『The Adventures of Martin Hewitt』
1903年 - 『The Red Triangle』
これらの作品は短編集として発表され、後に『マーチン・ヒューイット　完全版』（平山雄一訳、作品社、2021年）として集成されました。
悪漢探偵ホーレス・ドリントン:
1897年 - 『The Dorrington Deed Box』は中短編集で、戦前の「探偵春秋'37」などに一部翻訳があります。
ロマン活劇:
1904年 - 『緑のダイヤ』（The Green Eye of Goona）は、8話からなる連作で、『世界大ロマン全集 04』（延原謙訳、東京創元社、1956年）に収録されています。
その他:
1894年 - 『Tales of Mean Streets』
1896年 - 『A Child of the Jago』
1899年 - 『To London Town』
1900年 - 『Cunning Murrell』
1902年 - 『The Hole in the Wall』はモリスン唯一の長編小説です。

アーサー・ジョージ・モリスンは、その多岐にわたる才能と、社会に対する深い洞察力によって、イギリス文学史に名を刻む作家の一人と言えるでしょう。彼の作品は、現代においても多くの読者に愛され続けています。

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