シドニー・リー

Sir Sidney Lee (1859-1926) は、イギリスの伝記作家、評論家として著名な人物です。彼の名は、主に『英国人名事典』への多大な貢献によって知られていますが、シェイクスピア研究においても第一人者として高い評価を得ています。

Lee はロンドンのユダヤ系家庭に生まれました。シティ・オブ・ロンドン・スクールを経て、1878 年にオックスフォード大学ベリオール・カレッジに入学。1882 年に現代史を専攻して卒業します。在学中には既にシェイクスピア研究に傾倒しており、学術論文を発表するなど、その才能を発揮していました。卒業後、しばらくは家庭教師を務めましたが、学術誌への寄稿が関係者の目に留まり、転機が訪れます。

その転機とは、『英国人名事典』編集への参加です。編集長であった Leslie Stephen の下、副編集長として1883年に着任。Stephen の健康悪化に伴い、1890年には共同編集長、その後は単独で編集長を務めることになります。1900 年に全63 巻が完成するまで、その職責を全うしました。

Lee は編集長としての業務に加え、自らも多数の記事を執筆。その数は約 820 件、総ページ数は約 1370 ページにも及びます。とりわけ、最も長い記事として知られるシェイクスピアの記事（49 ページ）は、彼の筆によるものです。この事典の完成は、当時のイギリス社会において大きな出来事として迎えられ、盛大な祝賀会が催されるほどでした。

『英国人名事典』の初版出版後も、Lee は増補巻の編集、縮約版の作成、正誤表の作成など、事典の充実に向けた活動を継続しました。彼の尽力により、『英国人名事典』は権威ある情報源として不動の地位を築き上げることになります。これらの功績が認められ、1911年には騎士爵に叙されています。

『英国人名事典』での仕事以外にも、Lee は精力的に著作活動を行い、数多くの伝記や評論を発表しています。特に有名なのは、1898 年に初版が出版された『ウィリアム・シェイクスピアの一生』です。これは『英国人名事典』に掲載されたシェイクスピアの記事を基にしたもので、何度か改訂を重ね、シェイクスピア研究における重要な文献となっています。

他にも、ヴィクトリア女王の伝記や、エドワード 7 世の伝記などを執筆。エドワード 7 世の伝記では、王室からの修正要求を受けるなど、波乱に満ちたエピソードも残しています。

学術界における Lee の貢献は高く評価され、イギリス学士院フェロー、ナショナル・ポートレート・ギャラリー理事など、数々の栄誉職に就きました。また、大学教授として後進の育成にも力を注ぎました。

1926 年に生涯を終えた Lee は、シェイクスピアの生誕地であるストラトフォード＝アポン＝エイヴォンの墓地に埋葬されています。その功績は、現代においても広く称えられています。彼の生涯は、学問への飽くなき探究心と、綿密な作業を続ける粘り強さを示す、輝かしいものと言えるでしょう。

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