シド・ワトキンス

エリック・シドニー・ワトキンス：F1を救った医師

エリック・シドニー・ワトキンス（1928年9月6日 - 2012年9月12日）は、イギリスのリヴァプール出身の脳神経外科医であり、F1モータースポーツの歴史に名を刻んだ人物です。26年にわたるF1公式レースドクターとしての活動は、数々のドライバーの命を救い、モータースポーツの安全基準の向上に多大な貢献を果たしました。

輝かしい経歴

1952年にリヴァプール大学を卒業後、英国陸軍医療班として西アフリカで4年間勤務しました。その後、オックスフォード大学で神経外科を専攻。この頃からモータースポーツ、特にF1への関心を深め、シルバーストン・サーキットでレース中の事故対応に携わるようになります。

ニューヨーク州立大学からの教授職の誘いを機に渡米しますが、ほどなくイギリスに戻り、国立ロンドン病院で神経外科チーフとして活躍しました。医学博士号（MD）、イギリス王立外科学会会員（F.R.C.S.）の称号を持つ、その卓越した医学的知識と技術は、F1の世界でも高く評価されることになります。

F1における貢献：医療体制の改革

1978年、F1ブラバムチームのマネージャーでありFOCA会長でもあったバーニー・エクレストンとの出会いにより、ワトキンスはF1の公式レースドクターに就任します。
当時のF1の医療体制は、現在の水準から見ると非常に貧弱でした。医師は各国から雇われる形であり、設備も整っておらず、救急医療センターがテントだった場所もあったとワトキンス自身も振り返っています。

ワトキンスは、26年間という長きに渡りF1医療体制の改革に尽力しました。その尽力により、F1の医療レベルは飛躍的に向上し、ドライバーの安全確保に大きく貢献しました。彼の改革はF1にとどまらず、モータースポーツ界全体の安全基準の向上に繋がる大きな影響を与えました。

2004年、レース現場からの引退を発表。その後も、FIA自動車の安全に関する財団会長、FIAモータースポーツ安全研究所初代所長などを歴任し、モータースポーツの安全向上に貢献し続けました。2011年には、FIAモータースポーツ安全研究所の名誉会長に就任しています。

受賞と著書

数々の功績が認められ、2002年にはイギリス政府よりOBE勲章を受章、2004年にはリヴァプール大学より名誉博士号を授与されました。

また、自身の経験を活かした著書も多数出版しています。代表的な著書に『Life at the Limit: Triumph and Tragedy in Formula One』（邦題：『F1一瞬の死 F1専属医が見た生と死の軌跡』）があり、F1における生死の場面を克明に描き、多くの読者に衝撃と感動を与えました。

死去

2012年9月12日、84歳で死去しました。モータースポーツ界、そして医学界に大きな足跡を残したワトキンスの死は、多くの人々に惜しまれました。彼の功績は、これからもモータースポーツの安全性を支える礎となるでしょう。

まとめ

エリック・シドニー・ワトキンスは、卓越した医学知識と献身的な姿勢で、F1モータースポーツの安全基準を大きく向上させた偉大な人物でした。彼の功績は、多くのドライバーの命を救い、現代のモータースポーツの安全性の基礎を築きました。彼の生涯と功績は、後世に語り継がれるべきものです。

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