シナントロープ

シナントロープ（Synanthrope）

シナントロープとは、野生の動植物でありながら、人間の居住区域や人工的に改変された環境の近辺に生息し、人間の活動や人工物が生み出す様々な資源や機会を利用して生きる生物群を指す言葉です。

この語は、古代ギリシャ語に由来しており、「共に」を意味する接頭辞 `syn-` と、「人間」を意味する `anthrôpos` が組み合わさることで、「人間と共に生きるもの」という意味合いを持ちます。

人間は地球上の多くの環境を変化させてきました。都市、農村、工場、道路、公園といった人工的な環境は、野生生物にとって新たな生存空間や資源源となり得ます。シナントロープは、このような人間が作った環境に巧みに適応し、そこで繁殖し、個体数を維持しています。

シナントロープの例

シナントロープに含まれる生物は非常に多様です。以下にその一部を分類ごとに示します。

動物

哺乳類

クマネズミ、ドブネズミ: 人間の住居や建築物に侵入し、食料を漁ったり、隠れ家として利用したりします。
アブラコウモリ: 住宅の軒下や屋根裏などをねぐらとして利用することがあります。
アライグマ: 北米原産ですが、人為的な移入により日本に定着し、都市部や農村部で生息し、人間のゴミを漁るなどして生活しています。

鳥類

ドバト: 野生のカワラバトが家畜化され、再び野生化したものです。都市部の建造物を休息場所や営巣場所として広く利用しています。
ハシブトガラス: 都市環境に適応し、ゴミ捨て場などを主な採餌場所としています。
カモメ: 沿岸部に多いですが、都市部の河川や港湾でも見られ、魚市場の残渣などを餌とすることがあります。
スズメ: 人家の軒先や建物の隙間に巣を作り、人間の生活圏と密接に関わって生息しています。
ツバメ: 人家の軒下などに泥で巣を作り、繁殖します。飛んでいる昆虫を捕食します。
ハクセキレイ: 河川敷や水田だけでなく、都市部の水辺や開けた場所でもよく見かけられます。

爬虫類

ニホンヤモリ: 人家の壁などで見られ、夜間に照明に集まる昆虫を捕食します。
アオダイショウ: 森林や農耕地にも生息しますが、人家の近くでも見られ、ネズミなどを捕食することがあります。

節足動物

ゴキブリ: 人間の住居や飲食店、下水道などに生息し、人間の食べ物や有機物を食料としています。

植物

植物においても、人里や都市の空き地、道端などに生育し、人間の活動によって分布を広げたり、生育環境を得たりしているものがシナントロープに含まれます。例えば、耕作地の周辺に生える雑草や、舗装の隙間から生える植物などです。

関連する概念

シナントロープの概念は、以下のような言葉とも関連があります。

人里植物: 人間の生活圏、特に農耕地や集落周辺に特有の植生を指す言葉です。
里山: 人間の活動が自然環境と調和して行われてきた、二次的な自然環境であり、多くのシナントロープが生息する場所でもあります。
* 都市鳥: 都市環境を主な生息地とする鳥類を指す言葉で、シナントロープである鳥類はこのカテゴリに含まれます。

シナントロープは、人間社会が拡大するにつれてその生息範囲を広げ、人間と自然環境の相互関係を理解する上で重要な存在となっています。

もう一度検索