シベリアマーモット

シベリアマーモット (Marmota sibirica)

シベリアマーモットは、リス科マーモット属に分類される大型の齧歯類で、別名モンゴルマーモットとも呼ばれています。

分布

シベリアマーモットは、以下の地域に分布しています。

中華人民共和国（黒竜江省、内モンゴル自治区）
モンゴル国
ロシア（トゥヴァ共和国、ザバイカル地方）

形態

体長: 50 - 60cm
体重: 6 - 8kg（最大9.8kg）
尾長: 体長の50%以下
体色: 明褐色、頭部と尾の先端は暗色

分類

以下の亜種が確認されています。

Marmota sibirica sibirica (Radde, 1862)
Marmota sibirica caliginosous* Bannikov & Skalon, 1949

生態

標高600 - 3,000mの草原、ステップ、低木林、半砂漠などに生息しています。家族群を形成し、環境が悪い場合は3 - 6頭、良い場合は13 - 18頭で生活します。9月頃から巣穴で冬眠し、冬眠期間は夏季の栄養状態や秋季の天候によって変動します。

巣穴を掘ることで土壌を撹拌し、栄養素や空気の循環を促す役割も担っています。古巣は、コサックギツネ、マヌルネコ、イタチ類、ジリス類、ナキウサギ類、ハリネズミ類などの動物によって利用されます。

食性は植物食で、主に草本を食べますが、木の葉なども食べます。主な捕食者として、アカギツネ、オオカミ、ヒグマ、ユキヒョウ、ワシタカ類などが挙げられます。

繁殖形態は胎生で、冬眠明けの4月に交尾を行います。妊娠期間は40 - 42日で、5月下旬に1回あたり最大8頭（主に4 - 6頭）の幼獣を産みます。生後2年で性成熟しますが、通常は生後3年で分散します。

人間との関係

モンゴルでは「タルバガン」と呼ばれ、肉を食用とすることがあります。また、脂肪は火傷や凍傷、貧血に効果があるとされ、薬用にも利用されます。毛皮も利用され、スポーツハンティングの対象となることもあります。

マルコ・ポーロの『東方見聞録』にも、タルタール人が「ファラオ・ネズミ」を食用にしているという記述があり、これはシベリアマーモットであると考えられています。

しかし、シベリアマーモットは腺ペストを媒介することがあり、過去にはペストの流行で多数の死者を出しました。近年は生息数の減少に伴い、ペストの発生数は減少していますが、依然として注意が必要です。生息地で衰弱した個体や死骸を見つけても近づかない、触らないようにしましょう。また、現地の人に勧められても、安易にタルバガンの肉を食べないようにしましょう。

毛皮目的の乱獲により、生息数は激減しています。1990年代には、生息数が約70%減少したと推定されています。モンゴルでは法的に保護対象とされていますが、十分な保護対策は行われていません。

タルバガンは、草原の地面に穴を掘ることで土壌の通気性を良くし、生態系において重要な役割を果たしています。

その他

モンゴルは数少ないペスト発生国であり、毎年どこかで発生し死者も出ています。ペスト患者が出ると、感染拡大を防ぐために集落や町全体を封鎖することもあります。齧歯類、特に野生のものについてはペスト菌の保有を前提として取り扱う必要があります。

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