ユキヒョウ

ユキヒョウ（雪豹）

分布

ユキヒョウは、アフガニスタン東部からロシア南部にかけての中央アジアの山岳地帯に広く分布しています。具体的には、ヒマラヤ山脈、チベット高原、アルタイ山脈、天山山脈などの高山地帯に生息しています。

主な生息国は、アフガニスタン、インド、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、中国、ネパール、パキスタン、ブータン、モンゴル、ロシアです。かつては雲南省にも生息していましたが、現在では絶滅しています。

形態

ユキヒョウは、オスとメスで大きさに若干の差があります。オスの体長は104～125cm、メスの体長は86～117cmほどです。尾の長さは78～105cmで、体長の75～90%を占め、バランスを取ったり、寒さから身を守るのに役立っています。

体重はオスで25～55kg、メスで21～53kg。体毛は長く、寒冷な環境に適応しており、特に冬季には体毛が伸長します。例えば、夏季には体側面と腹部の体毛はそれぞれ2.5cmと5cmですが、冬季には5cmと12cmにまで伸びます。

毛色は、背面が淡灰色または淡黄色で、腹面は白色です。体側面には、暗色の斑紋で縁取られた不明瞭な斑紋があります。また、正中線に沿って黒い筋模様が見られます。

耳は小さく、目は上部に位置しており、岩陰に隠れながら獲物を探すのに適しています。虹彩は灰黄色で、瞳孔は丸く収縮します。鼻腔は幅広く、冷たい空気を吸い込んでも温めて湿度を与えることができます。足裏は体毛で覆われており、防寒の役割や雪面でも滑りにくくする効果があります。

生まれたばかりの幼獣は体長24cm、体重300～600g程度です。

分類

以前は、ユキヒョウは独自の属「ユキヒョウ属」に分類されていましたが、近年の分子系統解析により、トラと単系統群を形成することが示され、現在ではヒョウ属に分類されています。

生態

ユキヒョウは、標高600～6,000mの岩場や草原、針葉樹林などに生息します。獲物の移動や積雪状況に応じて、夏季は高地へ、冬季は低地へと移動します。

夜行性ですが、人のいない場所や冬季には昼間に活動することもあります。1日に10～12km移動し、時には28kmも移動することがあります。岩の隙間や崖の上、ヒゲワシの古巣などで休息します。

主な食料は、アルガリ、シベリアアイベックス、バーラルなどの大型有蹄類です。その他にも、ゴーラル、コウジョウセンガゼル、チベットガゼル、チルー、ヒマラヤタール、マーコール、ムフロン、ヤク、アジアノロバ、イノシシなども食べます。また、ハタネズミ、マーモットなどの齧歯類、ナキウサギ、ノウサギなどの小型哺乳類、鳥類も捕食します。地域によっては家畜も捕食し、食性の53%を占めることもあります。

ユキヒョウは胎生で、1～5月に交尾を行います。妊娠期間は90～105日で、岩の隙間や洞窟、樹洞などで出産します。産座には、母親が腹部から抜いた体毛を敷きます。1回に2～3頭の幼獣を産みます。生後7～9日で開眼し、生後2ヶ月で固形物を食べ始めます。授乳期間は2～3ヶ月で、飼育下では雌雄ともに生後2年で性成熟した例があります。寿命は10年以上、21年に達するという説もあります。

人間との関係

ユキヒョウは、毛皮が利用されたり、骨が薬用になると信じられてきたため、密猟の対象となってきました。また、家畜を襲う害獣とみなされることもあります。

人を捕食した例は報告されていませんが、激しく挑発された場合や狂犬病の個体に襲われた例が少数あります。アルタイ山脈では、狩猟したユキヒョウの葬送儀礼が行われていたこともあります。

生息数は、毛皮や薬用のための密猟、家畜との競合による獲物の減少、害獣としての駆除などにより減少しています。近年は、道路建設や鉄道敷設、採掘による影響、感染症なども懸念されています。

ソビエト連邦崩壊後は密猟が増加しましたが、集団農場の活動が低下したため獲物の量は増加しました。2016年現在では、カメラトラップや糞の調査から、従来考えられていたよりも成獣の個体数が約2倍多いと推定され、保護対策が進められています。これにより、生息数の減少の推移は、従来考えられていたよりも小さいとみなされています。

1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されており、国際的に保護されています。

日本では、ウンキア・ウンキアとして特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止されました。1987年には札幌市円山動物園が、初めて飼育下繁殖に成功しました。

マスコットキャラクター

2014年ソチオリンピックでは、ホッキョクグマ、野ウサギと共に、ユキヒョウがマスコットキャラクターに選ばれました。

出典

ウィキペディア

関連項目

ネコ科
ヒョウ属
ワシントン条約

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