シベリア鉄道殺人事件

シベリア鉄道殺人事件

『シベリア鉄道殺人事件』は、西村京太郎が1992年に発表した長編推理小説です。東京で発生した殺人事件を端緒に、十津川警部がシベリア鉄道を舞台に繰り広げる、壮大なスケールのミステリーです。

あらすじ

物語は、東京・歌舞伎町のホテルで外国人女性の刺殺体と瀕死の男性が発見されるところから始まります。男性は息絶える寸前に「シベリア鉄道…」という言葉を残しました。警視庁の十津川警部は、この謎めいた言葉を手がかりに捜査を開始します。

捜査線上に浮かび上がったのは、栄貿易（ドラマでは巴交易）という商社の関係者・長谷部功でした。十津川は、長谷部とシベリア鉄道を結びつける手がかりを掴み、観光客を装ってロシアへと向かいます。シベリア鉄道に乗り込んだ十津川は、長谷部と思われる人物、長谷部の関係者である菊池久幸、そしてウラジオストクで出会った北村秀子と出会います。北村は十津川のガイドとして同行することになります。

イルクーツクで長谷部が途中下車した後、十津川は日本領事館駐在員の沢木から、栄貿易（巴交易）が裏で行っている核兵器開発がらみの犯罪について知らされます。十津川、北村、沢木の3人は協力して捜査を進めることになります。

主な登場人物

警察関係者
十津川省三：警視庁捜査一課の警部。卓越した推理力で難事件を解決に導く。本作では、シベリア鉄道を舞台に国際的な陰謀に挑む。
亀井定雄：警視庁捜査一課の刑事。十津川の部下であり、相棒として活躍する。原作では途中参加だが、ドラマでは留守連絡係。

栄貿易（巴交易）関係者
長谷部功：十津川の推理により最初に容疑者として浮上する。所属する商社の謎の部署に所属。
菊池久幸：長谷部の直属の上司。冷酷な性格で、目的のためには手段を選ばない。
杉みゆき：長谷部の同僚。シベリア鉄道で十津川たちの捜査を妨害する。ドラマでは「杉原みゆき」。

その他
北村秀子：ウラジオストクで十津川と出会い、ガイドを志願する。実は沢木の部下であり、十津川の監視役として送り込まれた。
沢木信介：外務省参事官でイルクーツク領事館駐在員。核兵器開発に関する情報を掴み、十津川に協力を要請する。
ニーナ・チモヘイワ：バイカル湖畔で動物と共に一人暮らしをしている環境学者。ソビエト時代に核開発に参加した過去を持つ。
セルゲイ・チモヘイフ：ニーナの弟。日本に留学して日本人の恋人がいる。菊池たちに拉致される。

作品の魅力

『シベリア鉄道殺人事件』の魅力は、何と言ってもその舞台設定にあります。東京からシベリアへと舞台を移し、広大なシベリア鉄道を舞台に繰り広げられるサスペンスは、読者を否応なく引き込みます。また、十津川警部をはじめとする個性的な登場人物たちが織りなす人間ドラマも、作品の大きな魅力となっています。緻密なトリックと異国情緒が絡み合う、西村京太郎の傑作ミステリーです。

書誌情報

『シベリア鉄道殺人事件』（朝日新聞社、1992年12月、ISBN 4-02-256578-0）
『シベリア鉄道殺人事件』（光文社〈カッパ・ノベルス〉、1995年2月、ISBN 4-334-07126-0）
『シベリア鉄道殺人事件』（講談社〈講談社文庫〉、1996年1月、ISBN 978-4-06-263150-1）
『シベリア鉄道殺人事件』（朝日新聞社〈朝日文芸文庫〉、1996年11月、ISBN 4-02-264092-8）
『シベリア鉄道殺人事件』（光文社〈光文社文庫〉、2007年2月、ISBN 978-4-334-74207-2）

テレビドラマ

1999年には、渡瀬恒彦主演でテレビドラマ化されました。

『十津川警部シリーズ18・シベリア鉄道殺人事件』（TBS系列、1999年12月27日放送）

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