シボレー・HHR

シボレー HHR

シボレーHHRは、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ（GM）が製造し、シボレーブランドで展開したユニークなモデルです。その名称は「Heritage High Roof」（ヘリテージ・ハイ・ルーフ）の頭文字から取られており、その名の通り、伝統的なデザイン要素と高めのルーフラインを組み合わせた特徴的なスタイリングが与えられています。

このHHRは、2005年に開催されたロサンゼルスオートショーで、翌2006年モデルとして世界に向けて初披露されました。車体の基本骨格には、当時のシボレー・コバルトなどに用いられていたGMデルタ・プラットフォームが採用されています。

最も特徴的なのはそのスタイリングでしょう。往年の1949年型シボレー・サバーバンを現代的に再解釈したレトロテイストが随所に盛り込まれています。丸みを帯びたフェンダーや独立したヘッドランプなど、クラシックな雰囲気を漂わせつつも、現代のニーズに合わせたクロスオーバーSUVライクな形状を持っています。しかし、そのコンセプトや全体のフォルムが、先行して登場していたクライスラー・PTクルーザーに酷似しているとの批判も少なからず存在しました。興味深いのは、HHRのデザインを手がけたブライアン・ネスビット氏が、そのPTクルーザーのデザインも担当していたことです。両車に共通するレトロモダンなデザインアプローチには、彼の思想が反映されているのかもしれません。

搭載されるエンジンは、シボレー・コバルトなどにも採用されていた直列4気筒のエコテックユニットです。グレードに応じて、以下の2種類が設定されました。

2.2リッター仕様（LS、LTグレード）
よりパワフルな可変バルブ機構を備えた2.4リッター仕様（2LTグレード）

これらのエンジンは、HHRのキャラクターに合わせた十分な動力性能と燃費性能を提供しました。生産拠点としては、メキシコのラモスアリスペ工場が担っていました。

GMはこのHHRに対し、年間約6万台の販売目標を設定していましたが、発売初年度にはそれを大きく上回る9万3千台以上を売り上げ、期待以上の成功を収めました。個性的なデザインが多くの消費者に受け入れられた結果と言えるでしょう。

主に北米市場をメインターゲットとしていましたが、欧州や日本といった市場にも輸出が行われました。ただし、製造されたのは左ハンドル仕様のみだったため、イギリスなどの右ハンドル圏では正規販売されませんでした。

日本においては、三井オートモーティブ株式会社が輸入元となり、2007年の春から正式に発売が開始されました。個性的なデザインは日本の街中でも注目を集めました。

さらに、2009年9月には、実用性を高めた2シーターモデルの「PANEL」も日本市場に導入されました。このPANEL仕様は、LSグレードをベースとしており、以下の点が通常モデルと異なります。

後部座席を取り払い、広大なラゲッジスペースを確保。
リアサイドウィンドウおよびカーゴルームウィンドウが、ボディと同色のパネルに置き換えられている。

このパネル部分を活かしたペインティングやラッピングなど、個性的なカスタマイズが可能な点がこのPANEL仕様のセールスポイントとなっていました。仕事の道具を積むバンとしての用途はもちろん、趣味のトランスポーターとしても魅力的なモデルでした。日本での当時の車両価格は299万2500円でした。

シボレーHHRは、過去のデザインへの敬意を払いながら現代的な機能性を融合させた、ユニークなヘリテージデザイン車として、その存在感を放ちました。

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