シマアオジ

シマアオジ：減少する渡り鳥の生態と保全

シマアオジ(Emberiza aureola)は、スズメ目ホオジロ科に属する鳥類です。ユーラシア大陸の広い範囲で繁殖し、冬季になると南方に渡って越冬します。日本では、主に北海道で繁殖する夏鳥として知られていますが、近年、その生息数は減少の一途を辿っており、保全が急務となっています。

分布と渡り

シマアオジは、ウクライナからロシア極東部、中国、モンゴルにかけて繁殖し、冬は中国南部、インドシナ半島、インド北部などで越冬します。日本では北海道に渡来しますが、まれに本州でも観察されることがあります。フィンランドでは既に絶滅したとされています。北海道での繁殖地は、主に湿地や草原といった水辺の環境です。かつては青森県や秋田県でも繁殖が確認されていましたが、現在では北海道が主な繁殖地となっています。

形態

シマアオジの体長はオスで約14～15cm、メスで約13～14cmです。オスは頭部が黒く、胸から腹にかけて黄色い羽毛を持ちます。背中には褐色の縦縞があります。メスはオスに比べて色彩が地味で、頭部は褐色、胸から腹にかけては黄色ですが、オスほど鮮やかではありません。頭部には白い筋模様があります。翼長はオスが7.2～8.2cm、メスが6.9～7.5cmです。

生態

シマアオジは、非繁殖期には草原や農耕地、ヨシ原などに生息し、種子や昆虫などを食べます。繁殖期には水辺の草原や高層湿原、牧草地などで繁殖します。巣は地上や低木の枝に作られ、3～6個の卵を産みます。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は約12日です。雛は約14日で巣立ちます。

人間との関係と保全

シマアオジは、中国では古くから食用とされてきました。特に広東料理では「禾花雀」と呼ばれ、滋養強壮に効果があるとされ、秋の味覚として珍重されてきました。しかし、乱獲や生息地の減少により、その個体数は激減しています。中国では、現在では捕獲が禁止されていますが、密猟が後を絶ちません。

日本では、シマアオジは1974年から1978年には52か所で生息が確認されていましたが、1998年から2002年には15か所に減少しています。生息地の湿原の乾燥化などが原因と考えられています。環境省レッドリストでは絶滅危惧IA類(CR)に指定され、保護の対象となっています。2017年には国内希少野生動植物種にも指定され、捕獲や採取などが原則禁止されています。

シマアオジの減少には、中国での乱獲に加え、生息地の消失や環境変化も大きな影響を与えています。日本においても、湿地の減少や開発などにより、繁殖地の減少が懸念されます。そのため、生息環境の保全、持続可能な利用、密猟対策など、多角的な保全対策が急務となっています。国際的な協調も不可欠です。将来世代に残すためにも、シマアオジの保護活動は重要です。

もう一度検索