ホオジロ科

ホオジロ科（Emberizidae）

ホオジロ科（学名 Emberizidae）は、鳥類分類においてスズメ目に属する科の一つです。かつては、より大きな分類群の中でホオジロ亜科（Emberizinae）やホオジロ族（Emberizini）として位置づけられることもありました。この科に属する鳥類は、南極大陸およびオーストラリア区を除いた、非常に広範な地域、すなわち世界中のほぼ全域に分布しており、様々な気候や生息環境に適応した多様な種が含まれています。

系統的な位置づけと構成

本ファミリーは、「nine-primaried oscines」と呼ばれる、9枚の機能的な初列風切を持つ鳴禽類のグループの一員です。このnine-primaried oscines内での研究によれば、ホオジロ科はムクドリモドキ科やアメリカムシクイ科と遺伝的に近縁な単系統群を形成しており、特にムクドリモドキ科とは姉妹群の関係にある可能性が示唆されています。

ホオジロ科の内部は、大きく二つの主要な系統に分けられます。一つは「旧世界ホオジロ類（buntings）」、もう一つは「新世界ホオジロ類（American sparrows, New World sparrows）」です。これらの二つのグループが明確に分かれるかどうかについては、一部の研究でやや不確実な結果が見られるものの、他の複数の研究ではその単系統性が強く支持されています。

旧世界ホオジロ類は、現在の分類ではホオジロ属（Emberiza）のみで構成されています。過去にはこのホオジロ属から独立した単型の3属が存在しましたが、その後の研究により全てホオジロ属へと統合されました。対照的に、新世界ホオジロ類は20以上の属からなる多様なグループです。和名においては、旧世界グループの鳥類には「〜ホオジロ」という名前が多く用いられ、新世界グループの多くは「〜シトド」という名前で呼ばれます。ちなみに、「シトド」という言葉は、古くは「ホオジロ」を指す異称としても使われていました。

分類の変遷と現在の多様性

分子系統学的手法が導入されるにつれて、nine-primaried oscines全体の分類、そしてホオジロ科の位置づけは大きく見直されることになりました。遺伝子データに基づく研究の結果、かつてホオジロ科に分類されていたいくつかの属が、系統的な関係により他の科へ移動されました。

さらに、プエルトリコフウキンチョウ属（Nesospingus）、ツメナガホオジロ属（Calcarius）、ユキホオジロ属（Plectrophenax）からなる一群は、広義のホオジロ科の基底部で分岐する、あるいはアメリカムシクイ科に近い単系統群であることが明らかになり、現在ではホオジロ科から分離され、独立したツメナガホオジロ科（Calcariidae）として扱われています。

分類の歴史を振り返ると、伝統的な分類体系では、しばしばnine-primaried oscinesのうちの複数の科が統合され、ホオジロ類はその中でホオジロ亜科として位置づけられることがありました。特に新世界に生息するnine-primaried oscinesの大半あるいは全てを統合した際に、ホオジロ科という名称がその大きな科名として採用され、ホオジロ類はホオジロ科のホオジロ亜科とされるケースが多かったです。中にはアトリ科に含め、アトリ科ホオジロ亜科、あるいはさらに下位の分類単位とする見解もありました。著名なシブリー・アールキストの分類体系（Sibley et al. 1988）では、nine-primaried oscines全体がアトリ科に統合され、ホオジロ類はその中のホオジロ族として位置づけられました。また、スズメ上科に含まれるのが現在の一般的な見方ですが、かつてはこれらのグループをまとめて独立したホオジロ上科（Emberizoidea）とする説も提唱されたことがあります。

国際鳥類学会議（IOC World Bird List）の現在の分類によれば、ホオジロ科には29属、173種が認められています。この豊富な種数は、本ファミリーが世界各地の多様な生態系において重要な存在であることを示しています。旧世界のホオジロ属（Emberiza）は依然として多くの種を含みますが、新世界ホオジロ類は多岐にわたる属によって構成されており、例えばユキヒメドリ属（Junco）、トウヒチョウ属（Pipilo）、ヤブシトド属（Atlapetes）などが含まれています。これらの属や種は、生息地や形態、生態において大きな多様性を示しており、ホオジロ科というグループの進化的な成功を物語っています。

参考文献として、Klicka et al. (2007)、Weir et al. (2009)、DaCosta et al. (2009)などの分子系統学的研究が、現在のホオジロ科の理解に大きく貢献しています。

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