シムネルケーキ

シムネルケーキ：イギリスの伝統菓子、その歴史と文化

シムネルケーキは、イギリスとアイルランドで、レント（四旬節）の中頃やイースター（復活祭）の時期に食べられる伝統的なケーキです。ドライフルーツを豊富に使用し、マジパンで飾り付けられた円形のケーキは、家族や友人と切り分けて楽しむのが一般的です。クリスマスケーキと似ていますが、上面に11個のマジパンの団子を並べるのが特徴です。

シムネルケーキの概要

シムネルケーキは、小麦粉、砂糖、バター、卵などの材料を使い、ドライフルーツや柑橘類の皮を加えて焼き上げます。オレンジの花水やブランデーで風味付けすることもあります。現代のレシピでは、マジパンをケーキの表面だけでなく、生地の層の間に挟むこともあります。焼き時間には90分以上かかるため、型にベーキングシートを重ねたり、マジパンが焦げ付かないように保護したりする工夫が必要です。

シムネルケーキの起源と名前の由来

シムネルケーキの起源は中世に遡ると考えられています。当時は生地を煮てから焼く製法が一般的でした。名前の由来には諸説あり、ラテン語の「simila」（小麦粉）から派生したという説や、15世紀の人物ランバート・シムネルに由来するという説があります。しかし、ランバート・シムネルが生きた時代よりも前に、シムネルケーキの名前が文献に登場しているため、この説は有力ではありません。

シムネルケーキの飾り付け

シムネルケーキの特徴的な飾り付けは、上面に並べられた11個のマジパンの団子です。この団子は、イエスの12人の弟子のうち、裏切り者のユダを除いた11人を象徴するとされています。しかし、この解釈はビクトリア朝以降のものであり、起源は定かではありません。また、メイ・バイロンの料理書『Pot-Luck Cookery』(1914年)にはすでにこの飾り付けが見られますが、その理由については何も書かれていません。

シムネルケーキにまつわるエピソード

シムネルケーキには、さまざまなエピソードが伝えられています。例えば、かつて家事奉公に出ていた若い女性が、休暇で実家に帰る際に、雇い主の家で焼いたケーキを手土産にしたという話があります。また、シムネルケーキは、イギリスとアイルランドの母の日と関連付けられることもあります。しかし、これらの習慣は定着せず、20世紀後半には単にイースターのケーキとして認識されるようになりました。

地域ごとのシムネルケーキ

シムネルケーキの作り方や形は、地域によって異なります。ベリー、ディヴァイジズ、シュルーズベリーなどでは、それぞれの特徴的なレシピが長年にわたって受け継がれてきました。特にシュルーズベリーのシムネルケーキは人気が高く、ランバート・シムネルが起源であるという伝承も残っています。

シムネルケーキは、単なるお菓子ではなく、歴史や文化、宗教的な意味合いが込められた特別な存在です。イースターの時期には、ぜひシムネルケーキを味わい、その奥深い魅力を堪能してみてください。

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