シメオン1世

シメオン1世：ブルガリア帝国の最盛期を築いた皇帝

シメオン1世（864年頃 - 927年5月27日）は、第一次ブルガリア帝国の君主であり、その治世はブルガリア帝国の歴史において重要な転換点となりました。彼は帝国を最大版図に拡大し、東ローマ帝国を凌駕するほどの勢力を築き上げました。

生涯

生誕と修道士時代

シメオンは、ボリス1世の三男として生まれました。当時のブルガリアは東ローマ帝国との関係が悪化しており、キリスト教の受容を余儀なくされました。シメオンは、コンスタンティノープルで教育を受け、修辞学や哲学を学びました。当初は聖職者としての道を歩む予定でしたが、父ボリス1世が退位したことで状況は一変します。

ブルガリア王即位

兄のヴラディミルが反キリスト教的な動きを見せたため、ボリス1世は復帰し、シメオンを王位に就かせました。首都をプレスラフに移し、行政用語をギリシア語からスラブ語へと変更するという、重要な決定を行いました。

領土拡大と東ローマ帝国との戦い

シメオンは即位後、東ローマ帝国との敵対路線を強めました。商業的な不当な扱いをきっかけに東ローマ帝国と戦端を開き、数々の勝利を収めました。特に、896年のブルガロフェゴンでの戦いは、東ローマ帝国に大きな打撃を与えました。

また、東ローマ帝国がマジャール人を利用してブルガリアを攻撃した際には、ペチェネグ人との協力によってマジャール人を打ち破りました。その後、東ローマ帝国はブルガリアに貢納金を支払うことになり、シメオンの地位は高まりました。その後もシメオンは領土拡大を続け、バルカン半島西端まで勢力を広げました。

「皇帝」即位

912年、東ローマ皇帝レオーン6世が崩御し、後を継いだアレクサンドロスが貢納金の支払いを停止すると、シメオンはコンスタンティノープルを包囲しました。東ローマ帝国は混乱し、シメオンは貢納金の支払いと皇帝の娘との婚約を取り付け、さらに教会で「皇帝」と宣言されました。

しかし、東ローマ側は後にこの戴冠を無効とし、婚約も破棄しました。シメオンは再びトラキアへ侵攻し、東ローマ軍を破りました。その後も東ローマ帝国との戦いを続けましたが、最終的に決定的な勝利を収めることはできませんでした。

連年の外征と晩年

シメオンの軍事行動は毎年のように続き、ギリシア方面やセルビアにも侵攻しました。925年頃には「ローマ人とブルガリア人の皇帝」を名乗り、ブルガリアの大主教を総主教に昇格させました。

しかし、クロアティア王国との戦いで大敗を喫し、ローマ教皇の仲裁を受けることになりました。927年5月27日、シメオンはプレスラフで死去しました。彼の死後、ブルガリア帝国は徐々に衰退しましたが、その治世下でスラブ・キリスト教文化は大きく発展しました。

まとめ

シメオン1世は、第一次ブルガリア帝国の最盛期を築いた傑出した君主でした。彼は軍事的才能だけでなく、政治的な手腕にも長けており、ブルガリア帝国を強大な国家へと成長させました。彼の生涯は、ブルガリアの歴史において重要な位置を占めています。

参考文献

ロバート・ブラウニング著、金原保夫訳『ビザンツ帝国とブルガリア』東海大学出版会（1995/7/25）
Vassil N. Zlatarski『中世ブルガリアの歴史』（第1版、ソフィア1927年）
* Steven Runciman『A history of the First Bulgarian Empire』(G. Bell & Sons, London 1930)

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