シャウムブルク＝リッペ侯国

シャウムブルク＝リッペ侯国：知られざるドイツの小国

シャウムブルク＝リッペ侯国（Fürstentum Schaumburg-Lippe）は、かつてドイツ中部に存在した侯国です。現在のニーダーザクセン州の一部、具体的にはミンデンの北東、ハノーファーの南西に位置していました。首都はビュッケブルクで、1787年時点の人口は224戸でした（1974年には市域が拡大され1,300人、1980年代半ばには20,000人に増加）。19世紀半ばの面積は約340平方kmと小規模な国でした。

歴史

シャウムブルク＝リッペ伯領の成立

17世紀、三十年戦争後、シャウムブルク伯領が分割され、その北部がシャウムブルク＝リッペ伯領となりました。ビュッケブルクがその首都となります。

ヴィルヘルム伯の時代

1748年から1777年まで統治したヴィルヘルム伯の時代に、シャウムブルク＝リッペは興隆期を迎えます。ヴィルヘルムは啓蒙君主として知られ、哲学者トマス・アプト、神学者ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー、音楽家ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハを愛顧しました。フリードリヒ大王を訪問したこともあります。特に国防に力を入れ、ドイツ諸国に先駆けて国民皆兵制を導入し、市民に祖国防衛の義務を課しました。シュタインフーダー湖には人工島と要塞を築き、侵略に備えました。このヴィルヘルムシュタイン要塞では軍事学の教育が行われ、後の時代にはゲルハルト・フォン・シャルンホルストも学んでいます。現在は軍事博物館となっています。

1787年には、ヘッセン＝カッセル方伯が軍を侵攻させビュッケブルクを占領しましたが、ユリアーネ侯爵夫人の活躍により、ヘッセン軍は撤退しました。

ナポレオン戦争と侯国への昇格

19世紀のナポレオン戦争では、他のドイツ諸侯と同様に占領され、ライン同盟の構成国となりました。1807年には侯国となり、シャウムブルク＝リッペ侯国が正式に成立しました。

ドイツ帝国の一員として

1866年の普墺戦争ではオーストリア寄りでしたが、プロイセン王国の勝利により1867年に北ドイツ連邦の一員となり、1871年にはドイツ帝国に組み込まれました。軍事的にはプロイセン軍に編入されています。統一ドイツ帝国では2番目に小さな国でしたが、独自に銃器の開発も行い、1861年にはドルッシュ＆バウムガルテン銃を発明しました。

日本との関わり

このドルッシュ＆バウムガルテン銃は、1867年に日本にもたらされ、神戸のカール・レーマン商会を通じて会津藩から1300梃の受注を得ました。侯国からは下士官カール・ケッペンが軍事指導のため日本に派遣されました。しかし、銃の納品前に鳥羽・伏見の戦いが勃発し、納品は困難となります。その後、紀州藩がこの注文を引き継ぎ3000梃が納品され、紀州藩の洋式銃隊の錬成や兵制改革に貢献しました。1871年2月13日には、陸奥宗光がビュッケブルクを訪問しています。

侯国の終焉

第一次世界大戦後のドイツ革命により、1918年に侯国は解体され、その領地にはシャウムブルク＝リッペ州が成立しました。

君主一覧

1807年 - 1860年：ゲオルク・ヴィルヘルム (1787年 - 1807年まで伯爵位)
1860年 - 1893年：アドルフ1世ゲオルク
1893年 - 1911年：ゲオルク
1911年 - 1918年：アドルフ2世（ドイツ革命により退位）

シャウムブルク＝リッペ侯国は、その小さな領土ながらも、啓蒙思想の影響を受け、独自の軍事制度を持ち、さらには日本との意外な繋がりを持つなど、興味深い歴史を持つ国でした。

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