シャチー

シャチー（Śacī）

シャチーはインド神話における重要な女神で、アスラの娘でありながら、インドラ（帝釈天）の妻です。このような背景から、彼女はヒンドゥー教ではインドラーニーとも呼ばれ、非常に重要な存在とされています。漢字に翻訳されると『舎脂』または『舎支』となり、さらには仏教においても彼女に関連する呼称が存在します。例えば、インドラの人間時代の名前に当たる「憍尸迦」と結びつけて「憍尸迦夫人」と呼ばれることもあります。

シャチーの物語

シャチーの物語は、インド神話の中でも特に悲劇的であり、彼女の家族関係や愛の行方が絡み合っています。彼女は阿修羅族の王の娘で、その父は娘をインドラに嫁がせたいと考えていました。しかし、事態は急展開を迎えます。インドラが待ちきれずに力づくでシャチーを奪うという事件が発生し、彼女は凌辱されてしまいます。

この一連の出来事に反発したアスラ王は、インドラに対抗するために戦いを挑みます。シャチーの予期しない感情の変化が、事態をさらに複雑にします。インドラに凌辱されたにもかかわらず、彼女はインドラに愛情を抱いてしまうのです。このことに激怒したアスラ王は、戦の激化を招くことになり、天界全体が巻き込まれる大騒動となります。

この戦闘の結果、アスラ族は敗北し、天界である忉利天や善見城から追放される運命を迎えます。このシャチーの物語は、愛と復讐の力が如何にして神々の運命を大きく変えるかを示しています。

ヒンドゥー教におけるシャチー

ヒンドゥー教の伝承において、シャチーはアスラの一族であるダーナヴァ族を代表する存在でもあります。彼女は父であるプローマンに捕らえられ、同じくインドラに凌辱されますが、神話的な運命により、結局インドラを愛してしまいます。プローマンは彼女を抱いて戦いに赴きますが敗北し、結果的にアスラ族は無惨な運命を辿ります。それでもシャチーは、天帝となったインドラ王の神妃として堂々と存在感を示し、ジャヤンタという子どもを産むことになります。

シャチーはまた、怒りや嫉妬の女神とも解釈され、その感情は彼女の神話の中で重要な役割を果たしています。彼女はサプタ・マートリカー（七福神）としても知られ、タントラの教えでは、金色の身体を持ち、手には雷やインドラの武器であるヴァジュラを握っているとされます。

関連文献

このような神話の詳細は、菅沼晃が編纂した『インド神話伝説辞典』や、渡邉たまきによる『神の文化史事典』などに記載されています。これらの資料から、シャチーの神性やその物語の背後にある試練と愛のドラマについて、さらなる理解を深めることができるでしょう。

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