忉利天

忉利天（とうりてん）

忉利天は、仏教の教えにおいて特別な位置を占める欲界の天の一つです。サンスクリット語では「Trāyastriṃśa」、またはパーリ語の「Tāvatiṃsa」として知られ、一般的には「三十三天」として訳されます。この名前は、そこに住む33の天部や神々を含んでいます。

仏教の宇宙観では、忉利天は須弥山の頂上に存在すると考えられています。この神秘的な天は、帝釈天を中心に、さまざまな天部や神々が住んでいるとされ、全体で33の存在が見受けられます。特に重要な伝説として、釈迦の生母である摩耶夫人が死後、忉利天に転生したとされています。さらに、釈迦自身がこの天に昇り、彼女や他の天部に教えを説いたとの伝えもあります。

忉利天の構成

中国語や漢訳において「三十三天」という言葉は、天そのものとその住人の両方を指しますが、サンスクリット語ではこの二者を区別しています。『一切経音義』によると、忉利天は須弥山の頂上、閻浮提の上方、80,000由旬の高さに位置し、中心には善見宮があります。各方位には80,000由旬の大きな城があり、そこに帝釈天が住しています。また、各方向にはそれぞれ8つの城が存在し、そこには天部や神々が住んでいるため、全体で33の天が形成されるのです。

善見城は、忉利天の中心に位置し、金や戸羅綿など豪華な材料で装飾されています。特に殊勝殿には帝釈天が住み、その美しさは他のどの場所にも匹敵しないと言われています。この城には様々な市場が存在し、飲食、市場、衣服市場、戯女市場など、多彩な施設が揃っています。また、その周囲には四つの遊苑地もあり、平和で楽しい空間が広がっています。

生活と特性

忉利天に住む者たちは、特定の欲望を満たしつつ、風気が過ぎ去るとすぐに熱悩が解消されると言われています。彼らの身体的な特徴として、身長は1由旬で、衣服の重さは6銖、寿命は1000歳とされています。また、彼らの一昼夜は人間界の100年に相当し、初生時には人間の6歳のような姿を持つとのことです。

釈迦自身の教えによると、摩耶夫人は忉利天に転生した後、3ヶ月間も釈迦から教えを受けたとされ、その際には三道宝階を通じて僧伽施国に降り立ったというエピソードが伝わっています。

節日と文化

忉利天はインドやチベットの仏教圏で特に重要な位置を持ち、特定の日には教えを共有するための集会が行われます。これに関連して、チベット暦の9月22日には「ラバブ・ドゥーチェン」という祭りが催され、釈迦の三道宝階降下を祝う行事が実施されます。

結論

忉利天は、その複雑な構造と独特の文化を持ち、仏教の教義に深く結びついている特別な存在です。信者にとっては、肉体的な欲望を超えた、より高次の存在への道でもあり、宗教的な教えを受ける重要な場なのです。

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