シャトー・ディフ

シャトー・ディフの概要

シャトー・ディフ（Château d'If）は、フランス南部マルセイユの沖合約4キロメートルに位置するイフ島に築かれた歴史的要塞です。この城は1540年から1914年まで牢獄として使用され、特にアレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』の舞台として有名です。1926年にはフランスの歴史的記念物として保護指定されており、現在も多くの観光客が訪れています。

飼育小屋の歴史

1513年、インドのグジャラート州からポルトガル王マヌエル1世にインドサイが送られました。1516年、このサイをローマ教皇レオ10世に届けるために、船がイフ島に寄港し、この途中で飼育小屋が造られました。このサイの存在は当時の人々を惹きつけ、フランス王フランソワ1世もマリニャーノの戦いからの帰途に立ち寄っていました。その頃にドイツの画家アルブレヒト・デューラーが、友人から語られた噂を元に描いた木版画『サイ』も有名です。しかし、その後サイを載せた船が嵐に遭遇し、ジェノヴァ湾付近で遭難した結果、サイの死体は剥製となってローマに運ばれました。

要塞としての役割

シャトー・ディフは、フランソワ1世の命令により1524年から1531年にかけて建設されました。1481年にマルセイユがフランスに占拠されたことで、この要塞は地域の治安を維持するための監視の役割も果たしました。特に、この要塞の存在は抑止力として機能し、1531年7月には神聖ローマ皇帝カール5世がマルセイユを攻撃しようとした際に、この要塞を見ることで撤退したとされています。また、1701年には軍事技術者ヴォーバンがシャトー・ディフの欠点を指摘しています。

牢獄としての歴史

シャトー・ディフは、その孤立した位置と周辺海流の影響により脱出が難しいため、政治犯や宗教的な理由で投獄された者たちの収容施設として使用されました。ここには3500人以上のユグノー（フランスのプロテスタント）が投獄され、パリ・コミューンのガストン・クレミュも1871年に銃殺されました。特に、デュマの小説『モンテ・クリスト伯』により、主人公エドモン・ダンテスがこの城に収監されていたことが広く知られています。

当時は囚人の身分や財産によって待遇が異なり、貧しい者は窓のない地下牢に入れられ、裕福な者は資金を支払うことでより快適な個室に収容されました。著名な囚人の一人にオノーレ・ミラボーがあり、マルキ・ド・サドも収容されていたとされるが、それに関する明確な証拠は残っていません。

観光名所としてのシャトー・ディフ

1890年9月23日から一般公開が始まり、観光名所として多くの訪問者を引き寄せています。1926年には歴史的建造物として指定され、現在もマルセイユの旧港から観光船で訪れることができます。

逸話と歴史の繋がり

1800年にカイロで暗殺されたジャン＝バティスト・クレベールの遺体は、フランス本土に一時移送されましたが、ナポレオンは共和制の象徴となることを恐れ、遺体をシャトー・ディフに保管するよう命じました。この措置はルイ18世がストラスブールでの埋葬を許可するまでの18年間続きました。シャトー・ディフは歴史の舞台ともなり、今なお多くの物語を秘めた場所です。

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