シャドウ・DN12

シャドウDN12：F1の歴史に名を刻んだ、短命ながら印象的なマシン

シャドウDN12は、1980年のF1世界選手権において、シャドウ・レーシング・カーズによって投入されたフォーミュラ1マシンです。資金不足と開発期間の短縮という困難な状況の中、誕生したこのマシンは、シャドウチームにとって最後のF1カーとして、その短い歴史に大きな影を落としました。

苦境に立たされたシャドウチームとDN12の開発

1980年シーズン、シャドウチームは新型車DN11でシーズンに臨みましたが、予選落ちを繰り返すなど、マシンの戦闘力不足が深刻な問題となりました。この状況を打開するため、チームは改良型のDN12の開発を急ぎましたが、資金不足と人員不足という厳しい現実を突きつけられました。DN11をベースにしたDN12は、抜本的な改良とは言い難く、小改良の域を出ないものでした。

開発はヴィック・モリスとチャック・グレーミンガーによって進められましたが、多くの文献ではその技術的な詳細について「魅力的ではない」と評されています。ホイールベースは2578mmと、1980年シーズンのF1マシンの中では最短でした。コクピットマウントとエンジンカバーは水平に配置され、リアウィングは低く取り付けられていました。特徴的なのは、エアスクープが存在しなかった点です。サイドポンツーンは翼型でしたが、風洞実験は行われなかったと伝えられています。エンジンはDN11と同様にコスワースDFVエンジンを搭載していました。

期待に応えられなかったレース戦績

DN12は、第5戦ベルギーGPでジェフ・リースによって初投入されました。しかし、事前のテスト走行は行われず、リースは旧型DN11をドライブしたディヴ・ケネディよりも0.3秒速いタイムを記録したものの、両者とも予選落ちという結果に終わりました。続くモナコGPでも予選落ちを喫しました。

スペインGPでは、ケネディにもDN12が与えられましたが、予選ではリースが20位、ケネディが22位と辛うじて通過しました。しかし、このレースはFISAとFOCAの対立により、いくつかのチームが撤退したため、参加台数が減少した異例のレースとなりました。決勝では、ケネディが2周目にミスでリタイア、リースも42周目にサスペンショントラブルでリタイアを喫し、レース後に政治的理由からこのGPは無効とされ、ノンタイトル戦となりました。

フランスGPでは、全てのチームが出場しましたが、シャドウの2台のDN12はどちらも予選落ちに終わり、これがシャドウチームのF1活動の終焉を告げることとなりました。

セオドールチームへの移行と終焉

シャドウチームは、1980年5月にイギリスの実業家テディ・イップに売却され、チーム名はセオドール・シャドウに変更されました。イップは1981年シーズン、セオドール・レーシングとしてF1に復帰しました。その際にDN12はTR2と改名され、南アフリカGPに投入されましたが、11周目でリタイア。このレースも後にノンタイトル戦とされました。DN12は、セオドールチームにおいても輝かしい結果を残すことなく、その短い歴史に幕を閉じました。

結論

シャドウDN12は、資金難と開発期間の短縮という困難な状況の中で生まれた、シャドウ・レーシング・カーズの最後のF1マシンでした。期待されたほどの活躍を見せることはありませんでしたが、F1の歴史において、忘れ去られることのない、短いながらも記憶に残る存在としてその名を刻んでいます。その存在は、当時のF1界の厳しい現実と、チームの奮闘を物語る象徴的な存在と言えるでしょう。様々な文献がその技術的な詳細を記述しており、その詳細な分析を通じて、シャドウDN12の設計思想や開発過程をより深く理解することができます。

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