ウラクタス

アイルランドの議会：ウラクタス (Oireachtas)

アイルランドの立法府であるウラクタスは、国民議会を意味する二院制議会です。上院に相当するシャナズ・エアラン（Seanad Éireann、アイルランド元老院）と、下院に相当するドイル・エアラン（Dáil Éireann、アイルランド代議院）で構成され、ダブリンのレンスターハウスに議場を構えています。

ウラクタスの構成

ドイル・エアラン（下院）は、国民の普通選挙で選ばれる166名の議員から構成され、任期は5年です。単記移譲式投票に基づく比例代表制で、首相（Taoiseach）には下院解散権が与えられています。ドイル・エアランはウラクタスにおいて圧倒的な権力を持っています。

シャナズ・エアラン（上院）は、定数60名で、首相の任命、間接選挙、大学教授などから構成されています。下院と比べて権限は弱く、下院の決定に反する決議を行うことは稀です。

ウラクタスの役割と権限

ウラクタスは、アイルランドの法律制定の中枢機関として、以下の役割と権限を持っています。

立法および予算の承認: アイルランドの法律は、基本的に両院の承認を経て大統領の署名により施行されます。
条例の作成: 国内法の制定や改廃を行います。
憲法改正の提案: 憲法改正は国民投票で決定されます。
軍隊の動員: 国家安全保障に関わる重要な決定権を有します。
外交上の取り決めを国内法として施行: 国際条約などを国内法として有効化します。
特定の法律を域外にも適用: 必要に応じて、アイルランド国外にも法律の適用範囲を拡大できます。
国家非常事態への対応: 国家の非常事態において、必要な法律を制定します。

ウラクタスの制約

ウラクタスの権限は、以下の制約を受けています。

憲法の遵守: 制定される法律は、アイルランド憲法に反してはなりません。
EU法の優先: EU加盟国であるため、EU法は国内法と同様に扱われ、上位法として優先されます。
遡及適用禁止: 法律の適用は、制定日以降に限られます。
死刑廃止: いかなる犯罪に対しても死刑は適用されません。
北アイルランドへの立法権限なし: 憲法第3条により、北アイルランドに関する立法権は有していません。

ウラクタスの歴史

「Oireachtas」という名称は古アイルランド語に由来し、1922年から1937年のアイルランド自由国、そして現在の共和国においても用いられています。アイルランドの歴史においては、1800年まで存在したアイルランド議会（イギリス議会に従属）や、1919年に設立されたアイルランド民族主義者による一院制議会（ドイル・エアラン）など、様々な議会形態を経て現在の形に落ち着きました。1937年のアイルランド共和国憲法の制定により、現在のウラクタスが確立されました。

北アイルランドとの関係

アイルランドの憲法では、ウラクタスの権限はアイルランド全島に及ぶとされていますが、北アイルランドの統治に関しては、実際にはイギリスの管轄下にあります。北アイルランドからの議員の参加や、その権利をめぐっては、長年にわたり議論が続けられており、シン・フェイン党など、その参加を主張する勢力と、反対する勢力の対立が続いています。

まとめ

ウラクタスはアイルランドの政治の中核を担う重要な機関であり、その歴史と権限、そして北アイルランドとの複雑な関係性を理解することは、アイルランド政治を理解する上で不可欠です。

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