シャフミアン地区

シャフミアン地区：歴史と変遷

シャフミアン地区は、かつてアゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフに存在した行政区画です。アルツァフ共和国（事実上の独立国家、国際的にはアゼルバイジャンの一部と見なされる）が実効支配していましたが、2020年の紛争によってその大部分がアゼルバイジャンに返還されました。地区は、地理的・歴史的経緯から、北部と西部の2つの地域に大別されます。

シャフミアン地域

北部は、シャフミアンやゲタシェンといった集落がある地域で、歴史的にアルメニア人が多く居住していました。この地域は、アルツァフ建国の住民投票にも参加しました。しかし、1992年以降、アルツァフは実効支配しておらず、アゼルバイジャンが領有権を主張する「占領地」となっています。旧ソ連時代には、ナゴルノ・カラバフ自治州には属していませんでしたが、アルメニア人が多数居住していました。

カルバチャル地域

西部は、カルバチャルやチャラクダルといった集落がある地域です。元々アゼルバイジャン人が多く居住していましたが、1993年にアルツァフが占領しました。停戦後は、実質的にカルバチャル地域のみがアルツァフの支配下にありましたが、2020年の紛争によってそのほとんどがアゼルバイジャンに返還されました。

歴史的背景

シャフミアン地区は、その前身であるアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国のシャウミャノフスク地区時代から、ナゴルノ・カラバフ自治州には属していませんでしたが、アルメニア人が多数居住していました。1991年、アゼルバイジャン議会によってシャウミャノフスク地区は廃止され、近隣のカスム・イスマイロフ地区（現在のゴランボイ県）に編入されました。その後、アルメニア人住民を排除する「円環作戦」が実施され、多くの難民が発生しました。

1992年、旧シャウミャノフスク地区議会はアルツァフ共和国の建国を宣言し、ゲタシェン準地区もこれに加わりました。しかし、シャフミアン地域はアゼルバイジャン軍によって占領され、アルツァフは失いました。一方、アルメニア軍は1993年にキャルバジャル県を占領し、シャフミアン地区とマルタケルト地区に分割しました。紛争の結果、シャフミアン地域のアルメニア人は脱出し、カルバチャル地域のアゼルバイジャン人も脱出しました。

紛争後の状況

2020年のナゴルノ・カラバフ紛争の停戦協定によって、カルバチャル地域はアゼルバイジャンに返還されました。しかし、チャラクダルやアクナバードといった一部の村落はアルツァフの支配下に残されました。ただし、2023年のアゼルバイジャンによる攻撃によって、チャラクダルも失われました。現在、地区全体がアゼルバイジャンの支配下にありますが、名目上は地区が存続しており、行政長官が無給で公務に就いています。

地理と都市

シャフミアン地区は、ほぼ全域が山岳地帯であり、アルメニア高原の一部を形成しています。地区内には、タルタル川が流れ、農業用水や水力発電に利用されています。2020年時点で、地区には1つの都市（カルバチャル）と40の農村共同体がありました。多くはアゼルバイジャンに返還されています。地区の主要な都市、村落は以下の通りです。

カルバチャル
チャラクダル（2023年まで）
アクナバード（2023年まで）
その他、多くの村落（Nor Verinshen, Nor Manashid, Eghednout, Zuar, Tsar, Havsatagh, Nor Bradjour, ノル・ゲタシェンなど）

人口

2020年時点で、シャフミアン地区の人口は3,300人であり、アルツァフの総人口のわずか2%でした。住民のほとんどはアルメニア人です。

観光

シャフミアン地区には、多くの歴史的建造物が保存されており、温泉も多数存在します。主な観光地として、以下のものがあります。

ダディヴァンク修道院
ハンダバード修道院
ハンダバード要塞
ツァーリ村

シャフミアン地区は、その歴史的背景から、複雑な民族構成と政治状況を抱えています。2020年の紛争によって、大きくその姿を変えましたが、その歴史は今もなお、この地に残っています。

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