シャウミャノフスク地区

シャウミャノフスク地区の概要

シャウミャノフスク地区は、かつてアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国に存在した地区です。ロシア語では「Шаумяновский район」、アゼルバイジャン語では「Şaumyan (kənd) rayonu」、アルメニア語では「Շահումյանի շրջան」と表記されます。地区の中心都市はシャウミャノフスクで、面積は約600平方キロメートルでした。

歴史的背景

1991年当時、シャウミャノフスク地区の人口は約2万人であり、そのうち82%がアルメニア人でした。しかし、この地区はアルメニア人自治州であるナゴルノ・カラバフ自治州には含まれておらず、自治州の北に隣接していました。地区内にはアゼルバイジャン人の村も存在し、アルメニア人居住地域は自治州と隔絶された状態にありました。

当時、地区のアルメニア人は民族対立によって極度の困窮状態に陥っていました。生活物資は不足し、天候の良い日に限り、アルメニア・ソビエト社会主義共和国のエレヴァンからヘリコプターで燃料が輸送されるような状況でした。電話や郵便などの通信手段も機能せず、医療環境も劣悪でした。地区の主要産業であったワイン醸造や石膏生産も、輸出先を失い、事実上崩壊していました。

自治州への編入要求と挫折

1989年7月25日、地区ソビエトはアゼルバイジャン最高会議に対し、ナゴルノ・カラバフ自治州への編入を要請しました。同月には、アゼルバイジャン共産党地区委員会も地区の自治州への編入を決議しました。しかし、8月1日にバクーはこれらの要求を拒否しました。翌1990年1月15日には、地区と自治州に非常事態宣言が発令されました。

さらに、8月29日にはアゼルバイジャン共産党中央委員会が地区委員会の活動を停止し、第一書記のウラジーミル・アガジャニャンを民族主義者・分離主義者として除名しました。そして1991年1月14日、アゼルバイジャン最高会議幹部会は、シャウミャノフスク地区を隣接する自治州外のカスム・イスマイロフ地区（主にアゼルバイジャン人で構成され、シャウミャノフスク地区の50倍の人口を持つ）に編入することを決定しました（2月7日承認）。

円環作戦と避難民発生

1991年春、旧シャウミャノフスク地区は、同じくアルメニア人が多数を占めるハンラル地区と共に、ソ連軍とアゼルバイジャンOMONによる円環作戦の対象となりました。この作戦により、シャウミャノフスク地区からは1万7000人を超えるアルメニア人避難民が発生しました。

アゼルバイジャンがソ連から独立した直後の同年9月2日、シャウミャノフスク地区ソビエトは、自治州ソビエトとの合同会議で、新国家「ナゴルノ・カラバフ共和国」を共同で形成することを宣言しました。しかし、ナゴルノ・カラバフ戦争中の1992年6月12日、シャウミャノフスク地区はアゼルバイジャン軍によって制圧されました。

現在の状況

「ナゴルノ・カラバフ共和国」側は、現地名で旧シャウミャノフスク地区と同じ名前のシャフミアン地区を設置していますが、その領域は旧シャウミャノフスク地区とは完全に一致していません。

人口の推移

地区の民族別人口は以下のように推移しています。

(具体的なデータは参考文献を参照)

行政区分

1977年時点で、地区には首府シャウミャノフスクの他に、ユハルィ・アグジャケンドの2つの町と16の村があり、それらを管轄する2つの集落ソビエトと10の村ソビエトが存在していました。

参考文献

* de Waal, Thomas (2003). Black Garden: Armenia and Azerbaijan Through Peace and War. New York and London: New York University Press.

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