シャルトル大聖堂

シャルトル大聖堂：ゴシック建築の至宝

パリから南西約87kmに位置するシャルトル市にそびえ立つシャルトル大聖堂は、フランスを代表するゴシック建築の最高傑作の一つとして知られています。1979年にはユネスコの世界遺産に登録され、その歴史と芸術的価値から世界中から観光客を集めています。

歴史と建築

現在のシャルトル大聖堂の建設は1145年に始まりましたが、1194年の大火で大部分が焼失。残された西側の部分を残し、再建が開始されました。驚くべきことに、この再建はわずか26年という短期間で完成したと言われています。

ロマネスク様式の基礎の上に、初期ゴシック様式を取り入れて建てられた大聖堂は、その高い天井、精緻な彫刻、そして高くそびえる二つの尖塔が特徴です。一方の尖塔は12世紀前半に建てられた質素なもので、もう一方は16世紀初頭に建てられた華麗な後期ゴシック様式（フランボワイアン様式）の尖塔で、異なる様式が調和して存在しています。

大聖堂は、東西46メートル、南北32メートル、全長113メートルという広大な規模を誇り、その内部空間の広大さは圧巻です。37メートルの高さを持つ身廊からは、東端のアプスの壮麗なドームまで見渡せます。

聖遺物と巡礼

シャルトル大聖堂は、聖母マリアの聖衣（サンクタ・カミシア）を所蔵していることでも有名です。この聖遺物は、何世紀にもわたって多くの巡礼者を引きつけてきました。中世には、聖母マリアの祝祭日に合わせて縁日が開催され、聖衣を拝むために多くの巡礼者が訪れていました。

1194年の大火で聖衣は消失したと思われましたが、奇跡的に無傷で見つかり、人々はその奇跡を聖母マリアの加護と信じました。

ステンドグラス

シャルトル大聖堂の最大の魅力の一つが、そのステンドグラスです。13世紀初頭から残る多くのステンドグラスは、宗教戦争や「近代化」による損失を免れ、現在も152枚が残されています。

これらのステンドグラスは、鮮やかな色彩と緻密な描写で有名で、「シャルトルブルー」と呼ばれる鮮やかな青色が特徴です。聖母マリアとキリスト、アダムとイブ、ノアの箱舟など、数々の宗教画や物語が描かれています。第二次世界大戦中には、ドイツ軍の空襲から守るため、地方に移されて保護されました。

彫刻

大聖堂のドアやベランダには、精緻な中世の彫刻が施されています。キリストの生涯や聖人たち、そして国王や王妃の像など、700年前の技術で彫られた彫刻は、その精巧な技術と芸術性を今に伝えています。西側のファサードにある「王の門」と呼ばれる部分は、特に多くの彫刻が施されており、王族と神との結びつきを示唆する配置になっています。

聖堂学校

中世において、シャルトル大聖堂は重要な聖堂学校としても機能していました。カール大帝が推進した教育システムの中で、大聖堂は教育の中心地となり、特に論理学の研究で知られていました。ここで学んだ人物の中には、イギリスの哲学者ジョン・オブ・ソールズベリーもいます。

まとめ

シャルトル大聖堂は、その壮麗な建築、鮮やかなステンドグラス、精緻な彫刻、そして豊かな歴史から、世界中の人々を魅了し続けています。ゴシック建築の傑作として、そして聖母マリアの聖地として、これからも多くの人々によって大切に守られていくでしょう。

参考資料

ヘンリー・アダムス「Mont-Saint-Michel and Chartres」
イヴ・ドラポルト「Les vitraux de la cathédrale de Chartres」
エティエンヌ・ウヴェ「Cathédrale de Chartres」
馬杉宗夫『シャルトル大聖堂―ゴシック美術への誘い』
* 木俣元一『シャルトル大聖堂のステンドグラス』

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