シャルル・リヴィエル＝エラール

シャルル・リヴィエル＝エラール、あるいはシャルル・エラール・エネとして知られる人物は、1789年2月16日、ハイチのポルトープランスに生まれました。彼の出自に関する記録は乏しく、詳細は不明な点が多いですが、ハイチ革命において黒人軍の将校として活躍したことは確かなようです。

エラールが歴史の表舞台に躍り出たのは、ジャン＝ピエール・ボワイエ大統領の失脚を招いた農民蜂起を主導した時です。ボワイエ政権の終焉後、1843年4月4日、エラールは自ら大統領の座に就くと宣言しました。しかし、彼の政権は長くは続きませんでした。同年12月30日、エラール不在のうちに暫定議会が新憲法を制定したのです。この憲法制定に激怒したエラールは、軍の支持を背景に政府を掌握、大統領としての地位を確固たるものにしました。

しかし、エラールの政権は内外からの圧力にさらされました。1844年2月27日、スペイン領サントドミンゴ（現在のドミニカ共和国）東部で反乱が発生し、反乱軍は首都サントドミンゴを占領、ドミニカ共和国としての独立を宣言しました。この事態を受け、エラールはサントドミンゴの奪還を目指し、2万5000もの兵を率いて侵攻を開始します（3月10日）。しかし、この侵攻は失敗に終わり、エラールは撤退を余儀なくされました。

国内情勢はますます悪化の一途をたどりました。3月30日、エラールは新憲法を廃止し議会を解散するという強硬策に出ました。3月末には、長槍を武器とするピケと呼ばれる小作民と農民からなる反乱軍がレカイ付近に集結しました。この反乱軍は、元将校のルイ・ジャン＝ジャック・アカオー将軍率いる「窮民軍（L'Armée Souffrante）」、あるいは「南軍」と呼ばれていました。4月には政府軍を撃破した反乱軍は首都ポルトープランスを目指し進軍を開始、アカンの町まで到達しました。さらに、アカオー将軍はポルトープランスへと進撃を開始しますが、北部でも政府への反対派による反乱が発生するなど、情勢はエラールにとってますます不利なものとなっていきました。

最終的にエラールは、1844年5月3日に大統領職を放棄しました。その後、6月2日に国外へ亡命し、ジャマイカへと逃れました。そして、1850年8月31日、ジャマイカでその生涯を終えました。

短期間ではありましたが、ハイチ大統領として君臨したシャルル・リヴィエル＝エラールの生涯は、ハイチ革命後の不安定な政治情勢を象徴する出来事として、今日にまで語り継がれています。彼の失敗は、内外の圧力や、自身の強硬な政治姿勢が招いた結果であったと見ることができます。また、彼の統治はハイチとドミニカ共和国間の緊張を高め、両国の関係に大きな影響を与えました。彼の短い大統領在任期間は、ハイチの歴史における重要な転換期の一つであり、後の政情不安へと繋がる伏線ともなったと言えるでしょう。

もう一度検索