シャルロット・ド・ラ・モート＝ウーダンクール

ヴァンタドゥール夫人：ルイ15世の影の母

シャルロット・エレオノール・マドレーヌ・ド・ラ・モート＝ウーダンクール、通称ヴァンタドゥール夫人は、17世紀後半から18世紀前半にかけてフランス宮廷で大きな影響力を持った女性です。彼女はルイ15世の教育係として、少年王の成長に深く関わり、いわば母親のような存在としてその生涯を送りました。

ヴァンタドゥール夫人は、名門貴族の家に生まれました。父は陸軍元帥にまで昇進したカルドヌ公爵、母は王家のガヴァネスを務めたトゥシ女侯爵でした。彼女は、リムーザン州知事を務めていたヴァンタドゥール公爵と結婚しますが、夫は容姿も性格も問題があり、不幸な結婚生活を送ったと伝えられています。しかし、ヴァンタドゥール夫人は公爵夫人としての特権、例えば王妃の前で特別な椅子に座る権利などを享受し、その地位を最大限に活かしました。

当時の社交界の様子を知るセヴィニエ侯爵夫人の手紙には、ヴァンタドゥール夫人の宮廷でのエピソードが記されています。例えば、部屋に多くの公爵夫人たちが集まった際、ヴァンタドゥール夫人に椅子を用意するのに手間取ったという逸話などが残されています。これらの記述から、彼女が宮廷において高い地位と影響力を持っていたことが伺えます。


1704年、ヴァンタドゥール夫人はルイ14世の孫であるブルゴーニュ公とその家族の世話係となります。1709年には王家のガヴァネスの地位を妹に譲りますが、翌年には再びその地位に就きました。しかし、1712年、ブルゴーニュ公一家に悲劇が訪れます。ブルゴーニュ公と公爵夫人、そして二人の息子が相次いで病死したのです。特に幼いアンジュー公（後のルイ15世）は、当時の流行していた治療法である瀉血を避け、ヴァンタドゥール夫人の献身的な看病によって一命を取り留めました。

この出来事が、ヴァンタドゥール夫人のルイ15世への影響を決定づけました。彼女は、ルイ15世が成人する1717年まで、王の養育係として身の回りの世話をし続けました。その後はオルレアン公爵未亡人の女官となりましたが、1727年以降は再び王家のガヴァネスとして、ルイ15世と王妃マリー・レクザンスカの子供たちの世話に当たりました。

晩年はヴェルサイユ郊外のグラティニー城館で暮らし、1744年にその生涯を閉じました。ルイ15世はヴァンタドゥール夫人を深く敬愛し、「ママン」と呼んで慕い続けたと伝えられています。ルイ15世の成長に多大な影響を与えたヴァンタドゥール夫人は、公式な記録にはあまり残されていませんが、宮廷の裏側で重要な役割を果たした女性として、フランス史において特筆すべき存在と言えるでしょう。彼女の人生は、権力と愛情、そして時代の悲劇が複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。彼女の功績は、ルイ15世の治世、ひいてはフランスの歴史に大きな影を落としたと言えるでしょう。

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