瀉血

瀉血：歴史、方法、そして現代医学における役割

瀉血は、体外に血液を排出することで症状の改善を図る治療法です。古くはヨーロッパを中心に広く行われましたが、現代では医学的根拠が乏しいとされています。しかし、特定の疾患においては有効な治療法として用いられています。本稿では、瀉血の歴史、様々な方法、そして現代医学における役割について詳細に解説します。

古代から近世までの瀉血

中世ヨーロッパでは、瀉血は一般的な治療法でした。「熱、下痢、咳」など、あらゆる症状に瀉血が用いられ、医師は多くの患者の血を抜くことに終日費やしていました。この考え方の根底には、血液に不要な物質や有害物質が蓄積するという古代からの信念がありました。

初期の瀉血は、創傷からの膿排出や、鬱血した血液の排出を目的としていたと考えられています。中国医学の刺絡も、同様の考えに基づいています。また、ヒルなどの吸血動物を用いる瀉血法も古くから存在しました。

18世紀頃までは、瀉血はヨーロッパ全土に広まり、様々な疾患に用いられました。しかし、衛生状態の悪さや、瀉血による体力の消耗が問題視されるようになり、18世紀以降は徐々にその使用は減っていきました。エイダ・ラブレス、モーツァルト、ジョージ・ワシントンといった著名人も、瀉血によって命を落としたとされています。

瀉血の様々な方法

瀉血の方法には、血管を切開して出血させる方法、吸血動物を用いる方法、鍼を用いて少量の血液を排出する方法など、様々なものがありました。また、沖縄では伝統的な民間療法として、柄付き剃刀で皮膚を切開し、出血させる方法が用いられていました。

現代の瀉血は、主に医療機関で行われ、献血と同様の方法で血液を採取します。採取された血液は廃棄されます。献血に瀉血の効果を期待する声もありますが、日本赤十字社はそれを認めていません。

現代医学における瀉血

現代医学においては、瀉血は特定の疾患に対してのみ用いられます。その根拠は医学的に裏付けられています。主な例としては以下の通りです。

多血症: 血液細胞が過剰に作られる真性多血症では、瀉血が基本的な治療法です。ヘマトクリット値をコントロールするために、定期的に瀉血を行います。ただし、瀉血は病気の原因を解消するものではなく、対症療法です。
C型肝炎: 肝臓に蓄積した鉄分を減らすために、食事療法と並行して瀉血が行われることがあります。これは肝炎の進行を抑えるための対症療法です。
ヘモクロマトーシス: 体内に鉄が過剰に蓄積するヘモクロマトーシスでは、鉄分を除去するために瀉血が行われます。遺伝性ヘモクロマトーシスでは第一選択治療となります。
接合手術後の処置: 切断された四肢の接合手術後、血液循環が悪くなった場合に、ヒルを用いて血液を吸わせることで循環を促進させることがあります。
* 動物における瀉血: 競走馬に対して、馬針を用いた瀉血（笹針治療）が行われていましたが、近年禁止されています。

瀉血と類似の療法

カッピング療法（吸い玉療法）や、中国医学の刺絡も、瀉血と類似した療法です。これらの療法は、科学的な根拠が十分に確立されているわけではありませんが、民間療法として現在も行われています。

結論

瀉血は、長い歴史を持つ治療法です。現代医学では、特定の疾患に対して有効な治療法として用いられていますが、その歴史と、現代医学における役割を理解することが重要です。また、瀉血と類似の療法についても、科学的根拠を踏まえた上で理解する必要があります。

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