シャロン・ロックハート
シャロン・ロックハート（Sharon Lockhart、1964年生まれ）は、アメリカを拠点に活動するアーティストであり、主に映像や写真を用いて社会的なテーマを深く掘り下げた作品を制作しています。彼女の作品の特徴は、長期的なプロジェクトとして、特定のコミュニティと密接に協力し、その過程で生まれる人間関係や社会構造を繊細に捉える点にあります。
1991年にサンフランシスコ・アート・インスティチュートで美術学士号（BFA）を、1993年にはアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで美術学修士号（MFA）を取得しました。その後、ラドクリフ、グッゲンハイム、ロックフェラーといった名誉あるフェローシップを歴任し、その才能は広く認められています。彼女の作品は、国際的な映画祭で上映されるだけでなく、世界各地の美術館、文化施設、ギャラリーなどで展示され、国際的な評価を得ています。
南カリフォルニア大学ロスキ美術学校の准教授を務めていましたが、2015年8月に同校を辞任し、カリフォルニア芸術大学に移籍しました。これは、ロスキ美術学校の運営体制の混乱が原因であったとされています。現在は、カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動を続けています。
Goshogaoka Girls Basketball Team（1998）
日本での滞在制作で生まれたこの作品は、12枚の写真から構成されています。茨城県守谷市御所ケ丘中学校の女子バスケットボールチームを被写体とし、プロのアスリートの宣伝写真のようなスタイルで撮影されています。この写真作品は、映像作品「Goshogaoka」と連動しており、映像では、バスケットボールチームのメンバーが振付師によって入念に振り付けられた練習風景を映し出しています。映像作品ではカメラが固定されているのに対し、写真作品では視点が常に変化し、体育館や選手たちを捉え、視覚的な動きを生み出しています。
Teatro Amazonas（1999）
ブラジルのマナウスにある新古典主義様式のオペラハウスを舞台にした映像作品です。劇場内の観客席に座る地元の人々の様子が、全編にわたって映し出されます。固定カメラは、劇場のステージ前に設置され、合唱団「Choral do Amazonas」のライブパフォーマンスを聴く観客たちの姿を捉えています。カリフォルニアの作曲家ベッキー・アレンが作曲した合唱曲は、厚みのある和音で始まり、24分かけて徐々に音が小さくなり、それに伴い観客たちの声が聞こえるようになります。
NO（2003）
ロックハートが再び日本に滞在し、地元の農家と共同制作した作品です。「農の生け花」に着想を得て、干し草で畑を覆う2人の農家の姿が描かれています。映像全体を通して、彼らは徐々に固定されたカメラに近づき、最終的には干し草で覆われた畑の奥へと戻っていきます。このプロジェクトには、「No-No Ikebana」シリーズの写真作品も含まれており、31日間にわたって、日本の生け花の作法に従って配置された植物のライフサイクルを記録しています。
Duane Hanson シリーズ（2003）
このシリーズは、実在の人物を模したリアルな彫刻作品で知られるデュアン・ハンソンの作品へのオマージュとして制作されました。4部構成の写真作品は、ハンソンの作品「Lunch Break（1989）」に触発され、足場とはしごの間を降りて昼食をとる3人の建設作業員の彫刻に、美術館で展示作業を行う2人の人間を加えた構成となっています。また、「Maja and Elodie」という二枚一組の写真作品では、ハンソンの実の娘をモデルにした彫刻作品「Child with Puzzle（1978）」の向かいに、生身の女性を配置しています。
Pine Flat（2006）
カリフォルニア州シエラネバダ山脈の田舎の村を舞台にした16mmの長編映像作品「Pine Flat」と、ポートレート写真作品「Pine Flat Portrait Studio」は、アメリカの田舎に住む子供たちに焦点を当てています。19枚のポートレート写真シリーズのために、ロックハートは近くの納屋に写真スタジオを設置しました。自然光だけで照らされた、黒の無地の背景とセメントの床しかないシンプルな空間で、子供たちは撮影されました。撮影にあたり、ロックハートはポラロイドでテスト撮影を行い、被写体である子供たちとどのような写真を撮るかを事前に話し合いました。
Lunch Break（2008）
建築家のエッシャー・グネワルデナと共同で設計されたインスタレーション作品です。メイン州の造船所の労働者たちが昼食をとるロッカールームの廊下が、ワンショットで映し出されています。11分間の出来事を83分に引き伸ばした映像に、作曲家ベッキー・アレンと映画監督ジェームズ・ベニングが制作したサウンドトラックが加わり、労働者の声や工業的な音、そして音楽が織り成す独特の空間を作り出しています。付随する写真シリーズ「Lunch Scenes」では、昼休みに会話する労働者の姿を捉え、「Lunch Boxes」では、労働者の弁当箱を静物写真として写し出し、それらがまるで所有者の肖像画のように機能します。
Podwórka（2009）
ポーランドのウッチの街の中庭で遊ぶ子供たちを捉えた映像作品です。固定カメラを使用し、子供たちが考案した即興のゲームを記録することで、彼らの若々しい機知を映像として具現化しています。
Sharon Lockhart/Noa Eshkol （2011）
2011年から、ロックハートの作品は、イスラエルのアーティストであり振付家、ダンス理論家であるノア・エシュコル（1924-2007）のダンス作品に基づいたものになりました。ロサンゼルスユダヤ人連盟主催の調査旅行で、エシュコルのテキスタイルアーティスト、ダンス作曲家、振付記法のパイオニアとしての仕事を発見したロックハートは、エシュコルが主宰するNoa Eshkol Chamber Dance Groupのダンサーたちと協力し、「Five Dances and Nine Wall Carpets by Noa Eshkol」と「Four Exercises in Eshkol-Wachman Movement Notation」を制作しました。
Rudzienko およびポーランドでの継続プロジェクト（2013年 - ）
2013年以降、ロックハートは「Podwórka」の制作中にウッチで出会った若い女性、ミレーナとのコラボレーションを始めました。映像作品「Antoine/Milena」では、ミレーナがフランソワ・トリュフォーの映画「大人は判ってくれない」の象徴的な最後のシーンを再現しています。このコラボレーションを通じて、ポーランドのルジエンコにある社会療法のための青少年センターの存在を知り、3回の夏の間、運動療法士、哲学者、演劇監督、教育者と共に、センターの少女たちと一連のワークショップを実施しました。このコラボレーションから生まれた映画「Rudzienko」は、2017年の第67回ベルリン国際映画祭で初公開されました。2017年の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、ポーランドの代表として選出され、映像インスタレーション、ルジエンコの居住者との共同制作による写真シリーズ、青少年センターでの新しいワークショップの成果、そして1926年から1939年までポーランドで発行されていたユダヤ人新聞「Nasz Przegląd」に掲載された「Mały Przegląd（リトル・レビュー）」の英訳を組み合わせたマルチパートの展示を行いました。
ロックハートの作品は、ベルリンのneugerriemschneiderとニューヨーク/ブリュッセルのGladstone Galleryで取り扱われています。
1991年にサンフランシスコ・アート・インスティチュートで美術学士号（BFA）を、1993年にはアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで美術学修士号（MFA）を取得しました。その後、ラドクリフ、グッゲンハイム、ロックフェラーといった名誉あるフェローシップを歴任し、その才能は広く認められています。彼女の作品は、国際的な映画祭で上映されるだけでなく、世界各地の美術館、文化施設、ギャラリーなどで展示され、国際的な評価を得ています。
南カリフォルニア大学ロスキ美術学校の准教授を務めていましたが、2015年8月に同校を辞任し、カリフォルニア芸術大学に移籍しました。これは、ロスキ美術学校の運営体制の混乱が原因であったとされています。現在は、カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動を続けています。
主な作品
Goshogaoka Girls Basketball Team（1998）
日本での滞在制作で生まれたこの作品は、12枚の写真から構成されています。茨城県守谷市御所ケ丘中学校の女子バスケットボールチームを被写体とし、プロのアスリートの宣伝写真のようなスタイルで撮影されています。この写真作品は、映像作品「Goshogaoka」と連動しており、映像では、バスケットボールチームのメンバーが振付師によって入念に振り付けられた練習風景を映し出しています。映像作品ではカメラが固定されているのに対し、写真作品では視点が常に変化し、体育館や選手たちを捉え、視覚的な動きを生み出しています。
Teatro Amazonas（1999）
ブラジルのマナウスにある新古典主義様式のオペラハウスを舞台にした映像作品です。劇場内の観客席に座る地元の人々の様子が、全編にわたって映し出されます。固定カメラは、劇場のステージ前に設置され、合唱団「Choral do Amazonas」のライブパフォーマンスを聴く観客たちの姿を捉えています。カリフォルニアの作曲家ベッキー・アレンが作曲した合唱曲は、厚みのある和音で始まり、24分かけて徐々に音が小さくなり、それに伴い観客たちの声が聞こえるようになります。
NO（2003）
ロックハートが再び日本に滞在し、地元の農家と共同制作した作品です。「農の生け花」に着想を得て、干し草で畑を覆う2人の農家の姿が描かれています。映像全体を通して、彼らは徐々に固定されたカメラに近づき、最終的には干し草で覆われた畑の奥へと戻っていきます。このプロジェクトには、「No-No Ikebana」シリーズの写真作品も含まれており、31日間にわたって、日本の生け花の作法に従って配置された植物のライフサイクルを記録しています。
Duane Hanson シリーズ（2003）
このシリーズは、実在の人物を模したリアルな彫刻作品で知られるデュアン・ハンソンの作品へのオマージュとして制作されました。4部構成の写真作品は、ハンソンの作品「Lunch Break（1989）」に触発され、足場とはしごの間を降りて昼食をとる3人の建設作業員の彫刻に、美術館で展示作業を行う2人の人間を加えた構成となっています。また、「Maja and Elodie」という二枚一組の写真作品では、ハンソンの実の娘をモデルにした彫刻作品「Child with Puzzle（1978）」の向かいに、生身の女性を配置しています。
Pine Flat（2006）
カリフォルニア州シエラネバダ山脈の田舎の村を舞台にした16mmの長編映像作品「Pine Flat」と、ポートレート写真作品「Pine Flat Portrait Studio」は、アメリカの田舎に住む子供たちに焦点を当てています。19枚のポートレート写真シリーズのために、ロックハートは近くの納屋に写真スタジオを設置しました。自然光だけで照らされた、黒の無地の背景とセメントの床しかないシンプルな空間で、子供たちは撮影されました。撮影にあたり、ロックハートはポラロイドでテスト撮影を行い、被写体である子供たちとどのような写真を撮るかを事前に話し合いました。
Lunch Break（2008）
建築家のエッシャー・グネワルデナと共同で設計されたインスタレーション作品です。メイン州の造船所の労働者たちが昼食をとるロッカールームの廊下が、ワンショットで映し出されています。11分間の出来事を83分に引き伸ばした映像に、作曲家ベッキー・アレンと映画監督ジェームズ・ベニングが制作したサウンドトラックが加わり、労働者の声や工業的な音、そして音楽が織り成す独特の空間を作り出しています。付随する写真シリーズ「Lunch Scenes」では、昼休みに会話する労働者の姿を捉え、「Lunch Boxes」では、労働者の弁当箱を静物写真として写し出し、それらがまるで所有者の肖像画のように機能します。
Podwórka（2009）
ポーランドのウッチの街の中庭で遊ぶ子供たちを捉えた映像作品です。固定カメラを使用し、子供たちが考案した即興のゲームを記録することで、彼らの若々しい機知を映像として具現化しています。
Sharon Lockhart/Noa Eshkol （2011）
2011年から、ロックハートの作品は、イスラエルのアーティストであり振付家、ダンス理論家であるノア・エシュコル（1924-2007）のダンス作品に基づいたものになりました。ロサンゼルスユダヤ人連盟主催の調査旅行で、エシュコルのテキスタイルアーティスト、ダンス作曲家、振付記法のパイオニアとしての仕事を発見したロックハートは、エシュコルが主宰するNoa Eshkol Chamber Dance Groupのダンサーたちと協力し、「Five Dances and Nine Wall Carpets by Noa Eshkol」と「Four Exercises in Eshkol-Wachman Movement Notation」を制作しました。
Rudzienko およびポーランドでの継続プロジェクト（2013年 - ）
2013年以降、ロックハートは「Podwórka」の制作中にウッチで出会った若い女性、ミレーナとのコラボレーションを始めました。映像作品「Antoine/Milena」では、ミレーナがフランソワ・トリュフォーの映画「大人は判ってくれない」の象徴的な最後のシーンを再現しています。このコラボレーションを通じて、ポーランドのルジエンコにある社会療法のための青少年センターの存在を知り、3回の夏の間、運動療法士、哲学者、演劇監督、教育者と共に、センターの少女たちと一連のワークショップを実施しました。このコラボレーションから生まれた映画「Rudzienko」は、2017年の第67回ベルリン国際映画祭で初公開されました。2017年の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、ポーランドの代表として選出され、映像インスタレーション、ルジエンコの居住者との共同制作による写真シリーズ、青少年センターでの新しいワークショップの成果、そして1926年から1939年までポーランドで発行されていたユダヤ人新聞「Nasz Przegląd」に掲載された「Mały Przegląd（リトル・レビュー）」の英訳を組み合わせたマルチパートの展示を行いました。
ロックハートの作品は、ベルリンのneugerriemschneiderとニューヨーク/ブリュッセルのGladstone Galleryで取り扱われています。
参考文献
- - Sharon Lockhart 公式ウェブサイト
- - The Films of Sharon Lockhart
- - Sharon Lockhart Kadist Art Foundation
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